2019 Fiscal Year Annual Research Report
内戦における社会秩序の形成と市民の国家意識に関する実証研究
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18H00826
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
窪田 悠一 新潟県立大学, 国際地域学部, 准教授 (40710075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大林 一広 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (30598149)
大村 啓喬 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (50609344)
黒崎 卓 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90293159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国家意識 / 政治意識 / 投票行動 / FATA / パキスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、内戦下における国家及び反政府武装組織の実質的な領域統治と公共サービスの提供が一定の社会秩序を形成するという理解のもと、こうした秩序の形成は市民の政治・社会意識に対していかなる影響を及ぼすのかという点について焦点を当てている。前年度には実証分析に向けたデータ収集のためにパキスタンの旧連邦直轄部族地域 (Federally Administered Tribal Areas, FATA)において2,798人規模の質問票調査を実施し、国家及び反政府武装組織による公共サービスの提供は国家の正当性に関する人々の認識に対して様々な影響を及ぼすことが分かった。
こうした結果を踏まえ、当該年度の研究では国家の正当性の一側面である選挙に注目した。具体的には、彼らの政治意識や投票行動を把握することで、内戦における経験が戦後社会においても影響を及ぼしているのかについて検証した。2018年にFATAは政治改革の一環として隣接するカイバル・パクトゥンクワ州に併合され、また2019年7月20日には旧FATA地域に配分される議席をめぐる州議会選挙が行われた。そこで、当該選挙、州議会、地方政治に関する市民の意識や行動について質問票調査を実施し、彼らの投票の有無、政治意識、支持傾向などについて明らかにすることを目指した。当該年度の調査では、前年度に実施した質問票調査の回答者のうち、連絡先(携帯電話番号、Computerized National Identity Card (CNIC)番号)の提供に応じた者(1,729名)を調査の対象とし、聴き取りを行った。調査データは今後詳細な分析を行う予定であるが、市民の内戦時の経験が現在の政治意識・投票行動にいかなる影響を及ぼしているかが明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、当該年度においても大規模な現地調査(質問票調査)を実施することができた。また前年度に収集した調査データに基づく論文を複数の学会や研究会で発表し、学術雑誌に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査データをフォローアップするために、すでに聴き取りを行った対象者に対してさらなる質問票調査を行うことを予定している。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大のため、現地での大規模な対面調査の実施が難しくなることも予想される。その場合には、調査規模の縮小や方法の変更(フォーカスグループ・インタビュー、実験など)を行う方策である。
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