2020 Fiscal Year Annual Research Report
内戦における社会秩序の形成と市民の国家意識に関する実証研究
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18H00826
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
窪田 悠一 日本大学, 法学部, 准教授 (40710075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大林 一広 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (30598149)
大村 啓喬 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (50609344)
黒崎 卓 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90293159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内戦 / 公共サービス / FATA / パキスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
「内戦における反政府武装組織の領域統治を通じた社会秩序の形成は国家の正当性・信頼性に関する市民の意識にいかなる影響を及ぼすのか」という問いのもと、パキスタン・旧連邦直轄部族地域における市民の公共サービスの経験や暴力被害に関する村落レベルの詳細なデータを収集し、内戦における経験が戦後社会においても影響を及ぼしているのかについて検証した。
ここでは特に、当該地域において内戦前後にいかなる公共サービスや暴力があったのかについて明らかにするため、それぞれの調査地において村落の代表者に対する質問票調査を実施し、これらに関するできる限り客観的なデータを収集した。本調査では、主として各村落の村長や部族長などの身分を有する者を調査の対象とした。対象者の選定にあたっては、これまでに調査を行った村落を対象に、調査員が事前に3名の代表者を選定したうえで、彼らに調査への参加の意思を確認した。以前の調査でカバーされた村落の総数は118であり、そこから3名ずつの代表者を選定したため、調査全体の標本サイズは354人となった。質問票は大きく分けて、2002年以前及び以後の様々な政治アクターによる①公共サービスの提供と②暴力行使の有無に分けられる。質問票では回答者に虚偽の情報を与える行為を完全に排除し、これらのテーマについて具体的な質問を行った。
またこうした調査に加えて、本研究課題で収集された個票データの分析に基づく論文の執筆とその発表を継続して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初の計画通り、年度ごとに質問票調査を継続して実施してきた。特に当該年度は、これまでに聴き取りを行った者などに対して、内戦前後の社会秩序に関する村レベルの経験について調査を行い、それが市民の規範意識や現在の政治・社会集団や制度に対する意見に及ぼす影響を考察した。当該調査では、国家・反政府武装組織を含む政治アクターやコミュニティにおけるガバナンスに関する質問を中心に行った。ここで得られた情報は当該年度までの調査の結果を照らし合わせることで、内戦前後の経験と現在の規範・意識との関係性を分析するために用いられる。
また当該年度中には、収集済みデータを分析し、その結果を学会や研究会で報告するとともに、論文を評価の高い学術雑誌から刊行した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの収集した質問票調査の個票データや質的資料をそれぞれ回帰分析や過程追跡などの手法を用いて分析し、邦語および英語で論文・書籍の形としてまとめる作業を集中的に進める。この過程で研究代表者・分担者は国内外の学会での報告を積極的に行い、研究成果を評価の高い学術雑誌・出版社から刊行することを目指す。
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