2018 Fiscal Year Annual Research Report
Financial Inclusion through Mobile Money: Remittance, Consumption, and Investment of Migrant Workers and Their Family
Project/Area Number |
18H00838
|
Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
松本 朋哉 小樽商科大学, 商学部, 教授 (80420305)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真野 裕吉 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40467064)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | モバイルマネー / 金融包摂 / 出稼ぎ労働 / 貧困削減 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、モバイルマネーの普及が急速に進むバングラデシュとウガンダで、出稼ぎ労働者と地元家族を対象とした現地調査及び社会実験を行い、そこから得られる独自データをもとに、両者の間での所得移転のメカニズム及びその効果についてミクロ計量経済学の手法を用いて実証的に明らかにすることにある。 本研究の初年度であるH30年度は、バングラデシュの繊維・アパレル工場で働く出稼ぎ労働者を対象に、地元家族の学齢期の子どもの教育投資を促すためのマッチングファンドに関する社会実験を実施した。マッチングファンドとは、ある事業に対し出資者の出資額に、外部者(企業、行政、援助機関など)が一定割合の金額を上乗せしてより大きな資金を調達する方策で、援助資金や公共財投資資金等の調達に使われ、出資者の出資インセンティブを高める効果や事業に対するコミットメントを高める効果が期待されている。本プロジェクトでは、マッチングファンドの手法を採用することで、出稼ぎ労働者の地元家族の教育投資に向けた仕送りを促すことが可能か、また、結果として出稼ぎ労働者および地元家族の厚生および教育のパフォーマンスにどのような影響を与えるのかを詳細に検証する。研究対象は、本研究代表者らがこれまでに予備調査を行ってきたダッカ在住の繊維・アパレル工場の出稼ぎ労働者でかつ地元に学齢期の家族がいる者とした。実験はランダム化比較試験の手法を採用し、仕送りのインセンティブを高めるために、治験群の労働者が仕送りを行う場合補助金を与え、対照群の労働者には単に教育投資のリターン等の情報のみを与えるという方法をとった。また、年度末には、社会実験のインパクト評価を行うために出稼ぎ労働者およびその地元家族の双方から、家計レベルの消費、所得、仕送り等のデータを収集した。現在(2019年5月時点)、収集した実験データおよび調査データを元に分析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、モバイルマネーの普及が急速に進むバングラデシュ及びウガンダで出稼ぎ労働者とその地元家族の両サイドを対象とした社会実験および調査を行い、そのデータに基づいた実証研究を行うことで、家族の形態の変化及び家族間の所得移転メカニズムを明らかにすること、またその成果を国際学術雑誌等に掲載し、研究結果を広く世界に発信していくことを目的としている。こうした目的に照らすと、達成度を評価する基準は、1)調査の実施状況、2)分析および研究の質と進捗状況、3)成果の発信状況の3点に集約されよう。まず、(1)に関しては、H30年度に予定していたバングラデシュの繊維アパレル産業に従事する出稼ぎ労働者及びその地元家族に対する社会実験および電話調査を実施し、ぼぼ期待していた通りの情報を収集することができた。次に(2)に関しては、研究代表及び研究分担者・協力者がほぼ毎週スカイプ会議を開催し、共同研究の進捗の確認及び新たな研究課題の議論を行っている。最後に(3)に関しては、昨年度の本研究の研究代表者及び研究分担者が関わる学術的な成果物として、査読付き国際学術雑誌への論文の掲載実績が5本、国際学会等での研究報告が6回となっている。それらに加え、国際学雑誌への投稿中の論文も複数あり、近い将来それらの多くが掲載されることを期待される。以上の点からプロジェクト全体として概ね順調に進展しているといえよう。
|
Strategy for Future Research Activity |
R1年度は、本研究の対象国であるバングラデシュおよびウガンダでそれぞれ調査プロジェクトを実施し、収集されるデータの分析および論文の執筆を進める予定である。バングラデシュのプロジェクトでは、昨年度開始した首都ダッカのアパレル産業に従事する出稼ぎ労働者とその地元家族を対象とした電話調査を継続し、調査対象の出稼ぎ労働者の地元家族への仕送りが、どの程度子供の教育投資に繋がっているかを検証する。ウガンダのプロジェクトでは、本研究の研究代表者が中心となって実施したウガンダ農村家計調査(2015年実施、約1500家計のデータを収集)の対象家計に対し、携帯電話による追跡インタビュー調査を実施する。特に、出稼ぎ者の有無などの家族形態の変化に関する情報収集を進めるとともに、出稼ぎ労働者のいる家計に対しては、その地元家計と出稼ぎ者を対象に、両サイドから、それぞれ主に送受金、消費、投資行動に関する情報を収集し、家族間の所得移転メカニズムの分析を進める。
|
Research Products
(11 results)