2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H00841
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 孝明 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (30262091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田渕 隆俊 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (70133014)
佐藤 泰裕 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30332703)
中川 万理子 東京大学, 空間情報科学研究センター, 講師 (30779335)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 都市経済学 / 地域経済学 / 経済地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
始めに、高齢者の分布の特性をデータから明らかにした。令和1年度は、日本の分析に加えて、アメリカ合衆国における高齢者の空間分布を分析した。2010年の人口センサスデータから、366の大都市統計地区(Metropolitan Statistical Area)の高齢者率(65歳以上人口の比率)を求めた。大都市統計地区は、都市圏の操作的定義である。分析の結果、各地区の高齢者率と人口の間には弱い負の相関が見られた。つまり、人口の多い都市圏ほど高齢者率は低くなっていた。このことは、高齢者よりも非高齢者に対して、集積力が若干強くはたらいていることを示している。次いで、同じ大都市統計地区を対象に高齢者の分布のばらつきと、人口のばらつきを比較した。高齢者の分布のジニ係数は0.641、人口の分布のジニ係数は0.659であった。したがってばらつきに大きな差違はないが、高齢者の方が若干、均等に分布している傾向が伺える。 次いで、アロンゾ・ミルズ・ミュースの枠組みによる分析を論文にまとめると同時に、新経済地理学の理論モデルを用いて高齢者の立地パターンの分析を続けた。基本的な2地域モデルを構築し、いくつかの予備的考察を行った。とくに、高齢者が1地域に集積する傾向をもつ一方で、若年層が2地域に分散して立地する可能性について検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
権威のある国際学術誌に4本の論文が掲載され、それ以外に3本の論文が公刊された。また、海外の学会における報告が3件、国内での報告が4件ある。これらの数字は、当該分野においてはきわめて大きいと言える。この点から、研究は当初の計画を上回って進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、高齢化に関連したさまざまな都市・地域経済問題をマクロとミクロの両方のスケールでとらえ、その解決策を探る。 始めに、昨年度に引き続き、高齢者の立地パターンにどのような特性が見られるかを探り、それが高齢化の進展とともにどう変化してきたかを実証的に明らかにする。具体的には、さまざまなデータを用いて、高齢者と非高齢者の間で立地パターンにどのような差違があるか調べる。マクロなスケールだと、日本全域と都市地域(人口集中地区)や都市圏における分布パターンの差違を調べ、その要因を探る。ミクロスケールにおいては、都市圏内または都市内における分布パターンの差違を調べ、同じくその要因を探る。それには国勢調査の町丁目データやメッシュデータを活用する。 同時に、昨年度に引き続き、理論的な側面から高齢者の立地を明らかにする試みを続ける。マクロスケールに関しては、昨年度、空間経済学における核・周縁モデル(コア・ペリフェリーモデル)と重複世代モデルの融合の試みを開始したが、本年度はれをさらに発展させ、高齢者の立地のインセンティブを定式化する。また、都市コスト(urban costs)の影響を分析する枠組みをさらに精緻化させる。ミクロスケールの分析については、都市内土地利用の理論(Alonso-Mills-Muthモデル)を応用した分析をさらに発展させ、政策的含意を得る。
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Research Products
(19 results)