2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H00841
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 孝明 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (30262091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 泰裕 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30332703)
中川 万理子 一橋大学, 経済研究所, 講師 (30779335)
田渕 隆俊 中央大学, 国際経営学部, 教授 (70133014)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 都市経済学 / 地域経済学 / 経済地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、理論分析をさらに進め、高齢者の立地の特性についていくつかの知見を得た。具体的には、マクロ経済学でよく用いられる重複世代モデルを空間経済学の核・周縁モデル(core periphery model)に組み込み、その定常状態を分析した。高齢者は、若年層のように、賃金の高い地域に居住する必要がない。したがって、若年層よりも、より多くの財やサービスのバラエティーが提供される地域に居住するインセンティブをもつ。このことは、高齢者が若年層よりもより大きく集積する傾向をもつことを意味する。このことを、実際にモデルの定常状態において確認した。このことは、高齢化が進むことで、経済活動の集積の傾向がさらに強まることを意味する。 考えられる反論として、都市コスト(urban costs)の問題がある。高齢者は若年層よりも、より静謐で便利な環境に立地することを好むと思われる。つまり、高齢者にとって都市コストはきわめて高い。このことは、集積の傾向を減じるように働くと思われる。そのために、都市コストを分析に組み入れてモデルを拡張し、その影響についても分析を加えた。 さらに、データを用いて現実の高齢者の立地傾向を把握した。高齢者と若年層では移住にかかるコストが大きく異なると考えられる。そのため、単純に立地の傾向を比較することには意味がない。そこで、移住データを利用して、移住するという条件を所与とした場合に、大都市と小都市のどちらを選ぶかという問題を分析した。結果として、高齢者の方が若年層よりも大都市に移住する傾向が強いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、権威のある国際学術誌に4本の論文が掲載され、それ以外に5本の論文が執筆された。また国際学術誌に掲載された4本は全て査読付きで、しかもそのうちの1本は国際共同研究である。これらの分量は、当該分野においてはきわめて大きいと言える。この点から、研究は、当初の計画を上回って進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作成した理論モデルの細部をつめて、完成させる。可能であれば、移住コストを陽表的に分析に組み込んで、現実の移住問題に即した形にモデルを拡張することを考えている。また、理論モデルから得られる政策的含意についてさらに検討を加え、現実の問題の解決に資する提言が行えるようにしたい。
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Research Products
(16 results)