2019 Fiscal Year Annual Research Report
都市・交通分野の「証拠に基づいた政策立案」のための費用便益分析
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18H00848
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
城所 幸弘 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90283811)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | EBPM / 客観的証拠 / 政策立案 / 費用便益分析 / 都市 / 交通 / 社会資本 / 規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
交通投資・社会資本投資分野では、投資がもたらす、費用と便益とを比較する費用便益分析が導入されている。日本の交通投資の費用便益分析に関しては、様々な問題があるとは言え、経済学的な便益と費用に基づいて、政策の必要・不要を判断する仕組みは一応整っていると言える。一方、EBPMとは、「客観的証拠」と「政策」を結びつける考えである。しかし、客観的証拠があるだけでは、その政策が望ましいか否かを判断することができない。政策がもたらす社会的価値(便益)が費用を上回るかどうかが重要であり、それを行うのが費用便益分析である。費用便益分析は、政策を経済学的な観点で評価する唯一の方法である。交通投資・社会資本投資分野では、他の政策分野に比べて、比較的、費用便益分析が体系的に整備されており、費用便益分析の重要性は、EBPMが導入されても変わることはないが、両者の関係を整理することは重要である。 2019年度の研究では、第一に、交通投資・社会資本投資分野にどのようにEBPMを活用すべきかについて、2018年度に引き続き、いくつかの事例も踏まえて、主として以下の5点を検討した。①EBPMにおける客観的証拠とは何か、交通投資・社会資本投資で問題になる点は何か、②交通投資・社会資本投資分野で避けては通れない、プロジェクト期間が長期に及ぶことがもたらす、不確実性の問題、③客観的証拠を費用便益分析にどのように結びつけるか、④EBPMの遂行体制に関する問題点、⑤既存の政策評価体系から見たEBPMの望ましいあり方。それらの検討成果をまとめて、「交通・社会資本政策におけるEBPM-費用便益分析の一層の活用を」(『EBPMの経済学(大橋弘編 東京大学出版会)』第4章)として出版した。 第二に、空港規制に関する理論モデルを、空港が行っている様々な兼業(駐車場、ターミナルビルでの物販)を明示的に考慮して、構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交通投資・社会資本投資分野における客観的証拠を使った政策立案と費用便益分析の関係について整理をし、また、具体的な空港規制の分析が可能な理論モデルを構築することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、2019年度に出版した、「交通・社会資本政策におけるEBPM-費用便益分析の一層の活用を」(『EBPMの経済学(大橋弘編 東京大学出版会)』第4章)の内容を深化させ、都市・交通分野の「証拠に基づいた政策立案(EBPM)」のための費用便益分析のあり方についてさらなる検討を行う。第二に、2019年度に行った、政府による空港規制が、航空運賃、駐車場料金、ショッピングモールでの商品の価格に与える影響の分析をより発展させ、一般的な規制産業で成立する特徴は何かを分析する。すなわち、規制と本業、兼業の価格、利益水準の関係についてより一般的な分析を行う。より一般的な文脈で分析することで、研究のさらなる発展が期待できる。また、理論モデルを構築した後に、数値シミュレーションが可能なモデルを開発し、理論モデルの結果を検証し、その成果を理論モデルに還元する。数値シミュレーションが可能なモデルは、様々な数値において実行可能なモデルを目指し、社会的余剰に基づいた政策評価が可能なモデルに発展させることを目標とする。最終的には、社会的余剰に基づいて空港政策を評価し、証拠に基づいた政策立案(EBPM)の一例としたい。
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