2018 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Productivity Improvement in Multi-Product Firms
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18H00852
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳井 丞次 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (90192658)
川上 淳之 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20601123)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生産性 / 長期停滞 / 複数財 / スピルオーヴァー / 新陳代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、研究計画初年度ということもあり、代表者及び各分担者がそれぞれ本研究の研究目的に沿った研究実績を発表している。研究代表者である宮川は、複数財生産企業の生産性分析を含む生産性全般に関する解説書「生産性とは何か -日本経済の活力を問いなおす」をちくま新書として平成30年11月に出版した。個別論文としては、一橋大学大学院生の石川氏、神奈川大学助教の枝村氏、一橋大学の宮川氏、学習院大学の滝澤氏らと共同で、サービス産業生産性協議会が公表している日本の顧客満足度指数データを利用し、ブランドまたはサービスの評価データと企業の労働生産性との関係を調べた論文を平成30年10月に、一橋大学経済研究所が発行している「経済研究」に掲載した。 一方分担者の徳井信州大学教授は、地域別の生産性の計測とその分析に注力し、平成30年8月には、東京大学出版会から自らが編集した『日本の地域別生産性と格差 -R-JIPデータベースによる産業別分析』を公刊している。 同じく分担者である川上東洋大学准教授は、企業が複数の財を有する背景には、企業内での新規事業の立ち上げがあると考え、独自の調査をもとに、「日本の社内起業の実態―インターネット調査「新規事業参入に関する調査」で把握する特徴―」経済論集 44(2)(東洋大学)を平成31年3月に発表している。労働者が複数の職業を有することは、企業の複数財生産に相当するが、川上氏は、この問題に関する分析結果を多く発表している。査読論文としては、副業が従業員スキルを高めるかどうかを検証した論文を、Japan and the World Economy(平成31年3月)に公表しており、また同様の趣旨の和文論文については、「なぜ副業をするのか―自由と制約のあいだで」 (玄田有史編『30代の働く地図』, 岩波書店)を平成30年10月に公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿った研究の実施のためには、研究計画にも記載したように、政府統計の個票申請が必須である。この個票申請については、宮川と川上が、平成30年10月より経済産業省の「工業統計調査」から始め、平成31年1月にはこの個票を取得した。続けて、「経済産業省企業活動基本調査」の個票申請も行おうとしたが、研究代表者である宮川が、統計委員会委員として平成31年度初めから起きた統計問題に忙殺されることになったことと、同時に平成30年末から椎間板ヘルニアを発症したことから、申請準備のための十分な時間を確保することができなかった。 ただし、新たなデータの取得が若干遅れ気味とはいえ、データが取得できた場合の分析の準備は着々と進めている。宮川は、Dekle南カリフォルニア大学教授、川上東洋大学准教授、Kiyotakiプリンストン大学教授との共同研究(複数財生産企業を組み込んだ一般均衡モデルをベースにした実証分析)の改訂作業も行っており、平成30年8月に南カリフォルニア大学で開催されたAsia-Pacific Economic Associationのコンファレンスで報告を行っている。さらに産業レベルデータで、内生的成長理論を応用した研究開発の効率性に関する分析を行っている。この研究は、企業レベルのデータが得られた際に、研究開発によって、どの程度新製品が生み出せるかを分析する準備段階の研究と位置付けられる。平成30年度は、この研究成果を6月にはハーバード大学で、7月にはソウル大学で報告を行っている。 分担者の川上准教授も、(独)経済産業研究所のプロジェクトを通して取得した「経済産業省企業活動基本調査」のデータを利用して、企業レベルの本社部門が、多角化を通して企業レベルの生産性にどのような影響を与えるかという計測を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
個票申請については、現在「経済産業省企業活動基本調査」について進めている。「工業統計表」の経験から6月頃には取得できるよう努力する。ただ「科学技術研究調査報告」、「民間企業の研究活動に関する調査」は所管が異なるため、研究の進捗状況と合わせて進めていく。 複数財企業の特性の分析については、すでに「工業統計表」の新しいデータが得られているので、単に財の構成の変化だけでなく、財の構成と多角化との関係を分析することが可能となる。これを、川上東洋大学准教授を中心に進めていく。その際に徳井信州大学教授から新たな分析視点を提供してもらう。 また昨年度まで進めてきた研究については、今年度も引き続き学会発表やDiscussion Paperなどの公表を行う。Dekle, Kawakami, Kiyotaki, and Miyagawa (2015)の改訂版については、令和元年7月のWestern Economic Association International Conference (於サンフランシスコ)で、報告を行う予定。また宮川の研究開発効率性の研究や川上准教授の本社機能と多角化の分析については、いずれも令和元年の夏頃までに、(独)経済産業省のDiscussion Paperとして公表する予定である。 研究代表者と分担者の連絡もこれまで以上に緊密化する予定である。すでにこの4月に3名で今年度の研究予定を確認しあい、令和元年8月には信州大学で、11月と翌年2月頃には京都(宮川が研究休暇で京都大学経済研究所に滞在するため)で進捗状況を確認する場を持つ予定である。
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Remarks |
石川貴幸・枝村一磨・滝澤美帆・宮川大介・宮川努「どのような企業のサービスの質が高いのか」 RIETI DP.No.18-J-027, 2018年9月. 宮川努「好調景気に潜むリスク下 海外発危機に抵抗力乏しく」11月5日/宮川大介「成長戦略に何が必要か(下) 資源配分、計測データ基に」6月29日/滝澤美帆「低い日本の労働生産性(下) 産業・企業間で格差大きく」3月6日(すべて日本経済新聞)
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Research Products
(19 results)