2019 Fiscal Year Annual Research Report
租税に対する政策選好:納税意識と税制改正の影響に関する計量分析
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18H00868
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
玉岡 雅之 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (90197559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川瀬 晃弘 東洋大学, 経済学部, 教授 (10453854)
横山 直子 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (20319891)
宮崎 智視 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (20410673)
中澤 克佳 東洋大学, 経済学部, 教授 (20453855)
大野 裕之 東洋大学, 経済学部, 教授 (50285459)
亀田 啓悟 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (80286608)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 納税意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は第1回目のアンケートを実施し,2020年度に実施する第2回目のアンケートの設計を行った. まず,「『機会があれば税金を過少に申告する』という意見についてあなたはどのように考えますか」という,World Value Survey(WVS)のcheatingに関する質問を和訳して項目とした.結果,「決して正当化されない」との回答をした個人の比率は46%に上ることが示された.正しく税を申告しようという意思を持つ回答者は半数以上を占めているものの,「日本はtax moraleが高い」との東京都主税局(2017)でも紹介されたWVSの結果よりは低いことに注目すべきである. 消費税増税に対する賛否に関するについては,ほぼ50%の人が「反対」「どちらかといえば反対」と回答している.一方,「どちらかといえば賛成」の比率は25.2%であり,「強く賛成」とする人は5.4%に止まっている.また,各個人が望ましいと思っている消費税率についての分布をみると,半数近くの人が0%から5% の範囲に分布している.現状の8%という回答を選んだ人の比率は9.32%,10%という回答の比率は20.54%であり,今回引き上げる水準までは許容範囲,と考えている回答者も一定数存在していることが明らかとされた.また,15%という回答が8.38%,20%という回答も5.03%と,一部のヨーロッパの国と同じくらいの水準を許容する人も少なからずいることも付言したい. 「高いtax moraleと強い租税抵抗」という,ある種の「taxpayer paradox」が,今回のアンケート調査からも裏付けられることが分かった.実際に,cheatingを良しとしない回答者が7割近くに上り,かつ同じくらいの人が税を正しく申告することに注意を払っていることが明らかとされた,
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,アンケートを実施し,かつ予想された結果が得られた点は大きいと考えられる.とりわけ,自発的納税意欲(tax morale)に関して,従前の研究ではバイアスが生じているのではと懸念されていたものの,今回の結果はそれよりも低いことが示された.従前の研究では対面調査であるため,正しい意見が聴取されなかったものの,今回はインターネット調査であるため,より正確な個人の意向を捉えることができたものと考えられる.また,研究成果も複数出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に引き続き,2020年度もアンケート調査を実施する.2019年度のフォローアップは勿論,自発的納税意欲や「望ましい」消費税率については,同じ項目を設定する.それによって,消費税増税の実施前後で変化が見られるか否か,変化があるとすればその要因は何であるのかについて,計量分析を試みたい.
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Research Products
(4 results)