2018 Fiscal Year Annual Research Report
Asset Pricing and Portfolio Management Using Higher-Order Moment (Volatility and Skewness)
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18H00872
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大橋 和彦 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (50261780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 信弘 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (90323899)
本多 俊毅 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (70303063)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 確率ボラティリティモデル / ボラティリティ・リスクプレミアム / リターン予測可能性 / 分散の分散リスクプレミアム / バリアンス・スワップ / 曖昧さ回避 / 曖昧さプレミアム |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の研究実績は以下の通り。ボラティリティ・リスクプレミアム(VRP、変動性に対するリスクプレミアム)の資産間での関係については、株式と原油の日次のVRPの動学的関係の実証分析を行い、動学的関係が時期により変化し有意な関係が観察されるのはリーマンショック以降であること、原油VRPが株式VRPに与える影響はその逆よりも強いこと、原油VRPの株式VRPへの影響は長期にわたるが株式VRPの原油VRPへの影響はごく短期で消えることを見出した。これは、投資家のセンチメントの伝播が主に原油市場から株式市場へ向かったことを示唆している。 VRPの資産リターンの予測可能性に関しては、分散とリターンの攪乱項間の負の相関(レバレッジ効果)が重要な役割を果たし、レバレッジ効果の強い資産では確率分散がリターンの攪乱項を抑制する方向に働き将来リターンの予測可能性を高めることを示した。また、VRPと将来リターンの決定係数の理論値が、観察される予測期間に対する予測決定係数の山形の形状を再現することを示した。さらに、代表的な資産について決定係数のピークとレバレッジ効果に密接な関係性があることを確認した。その他、S&P500指数、VIX、VVIXの3つの階層からなる指数の変動を構造的に説明する理論モデルを構築し、既存のアファイン型SVモデルの問題点とそれを克服するアファイン型SVモデルの考察を行った。 投資家の曖昧さ回避のポートフォリオへの影響に関する理論研究では、標準的な平均分散モデルに曖昧さ回避を持ち込むことにより、危険資産ポートフォリオの構築が曖昧さに対する回避係数に直接的な影響を受けることを示した。また、与えられた危険資産ポートフォリオを最適解として選ぶ投資家の曖昧さ回避係数の最小値を求め、株式市場におけるマーケットポートフォリオを最適解とする代表的経済主体の持つ曖昧さ回避係数を算出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、研究計画に基づき必要となるデータ(株式、原油、金、為替等の高頻度(1分間隔)データ等)を入手し、それらから求めた日次のVRP間の一部について動学的な関係を分析して予備的結果を得る他、VRPによる将来リターンの予測可能性について理論モデルを構築したうえで、これらのデータを用いてその理論的含意を検証している。また、曖昧さ回避とポートフォリオやリスクプレミアムの関係についても、理論モデルを構築しその実証分析を進めている。さらに、こうして得られた成果を、論文やディスカッションペーパーにまとめ、いくつかの学会で発表した。今後の方向性も明確であり、順調に研究・分析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
第一のテーマであるボラティリティ・リスクプレミアム(VRP)の異なる資産間での関係のについては、2018年度に整えた株式、原油、金、為替についての高頻度(1分間隔)データを用いて各資産の日次のVRPを求め、より多くの種類の資産間の動学的関係の時系列分析を進める。具体的には、モデルを介さず直接推定したVRPを用いて多様な資産収益率とVRPとの動学的関係を明らかにする他、VRPと収益率の変化の関係、またレジームによる同関係の変化等も分析する。 第二の投資家が認識する不確実性の構造の詳細の分析に関しても、本年度の研究を深化させる。通常利用されるのは1ヵ月満期のVIXであるが、先物市場では1年先までの月次満期VIX先物が取引される。VIXの平均回帰型確率ボラティリティ(SV)モデルとそれに自己励起型ジャンプを付け加えたそれぞれのモデルでVIX先物の理論価格を導出できたので、今後はそれらを同時に観測量として用いる期間構造適応型SVモデルの推定を行い、VRPの期間構造の変動特性を明らかにすると共に、将来リターンの予測の精度改善を行う。また、VRPから連続的な分散の変動に対するプレミアムと突発的に発生するジャンプに対するプレミアムを識別し、それらのリターン予測性に対する影響も分析する。 第三のモデル選択と曖昧さ回避の分析に関しては、これまでの研究で構築した、資産への投資収益に対するモデル不確実性やパラメータ推定の不確実性のもとでの最適ポートフォリオ選択問題の理論モデルをもとに、曖昧さ回避と資産価格の関係を理論的・実証的に検討する。また、資産価格データから曖昧さ回避の強さや、投資対象に対する曖昧さを算出する方法を求め、投資家の持っている曖昧さに対する認識と、曖昧さを回避しようという動機の強さを算出する。これによって、資産価格モデルの変動特性に対して、曖昧さ回避の観点からの理解を深める。
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