2019 Fiscal Year Annual Research Report
Structure and Function of Better Social Communities toward Mutual Cooperation
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18H00893
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
高橋 徳行 武蔵大学, 経済学部, 教授 (60366838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西口 敏宏 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (20270928)
伊藤 誠悟 武蔵大学, 経済学部, 教授 (80612275)
鹿住 倫世 専修大学, 商学部, 教授 (00349193)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネットワーク / アントレプレナーシップ / 女性起業家 / コミュティ / 企業間関係 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1には、従来見逃されてきた「中範囲の」コミュニティーを分析単位とし、そこにおける社会的刷り込み、同一尺度の信頼、準紐帯という3つの鍵概念の相互作用を、実証的に示すことである。そうした観点から、日本自動車工業会が、トヨタ自動車のリーダーシップの下、優れた指導力を発揮した実例、すなわち、東日本大震災で被災したルネサス半導体工場の復旧活動を取り上げ、英文の論考にまとめ上げた。 第2には、グループ外部の企業や大学等の研究機関との技術アライアンスに積極的な企業とそうでない企業の違いを生み出している諸要因の考察を行った。具体的には、中小製造企業に対するアンケート調査データを用い、アライアンスに積極的な組織の特性を分析した。 第3には、女性の起業支援とコミュニティー、ソーシャルネットワークの関係を中心に、文献調査および関係者へのヒアリングを行った。2019年12月13日に開催された、経済産業省の「女性起業家支援等ネットワーク構築事業」の自立化検討会議に出席し、地域において女性起業支援を実施している中核機関の方へのヒアリングを実施した。特に、地域の女性起業支援ネットワークの連携を図っている北海道の事例について、詳しく調査した。 第4には、鳥取県、兵庫県との県境にある岡山県の人口1,500人足らずの地域(西粟倉村)に、12年間で45の事業が生まれ、新たに140人の若者が住むようになったことを受けて、その地域がどのようなネットワークを形成することによって起業活動が促進されたのかを調べるための第1回実地調査を前年度に行い、今年度はZoomによる関係者へのヒアリングを行った。また、GEM(グローバルアントレプレナーシップモニター)調査を使って、起業家とネットワークを有する人とそうではない人の属性や起業化率をデータによって分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年1月以降のCOVID-19によって、2020年2~3月に計画していた実地調査が実施できなかったことがあるので、「やや遅れている」と判断した。本研究は、実地調査によるヒアリングを積み上げて、仮説を検証していく方法を採用しているため、現地を訪問できなくなったことの影響は少なからずある。ただし、2020年度以降は、Zoom等によるインタビューの体制がヒアリング相手先にも整ってきたので、今後遅れを取り戻すことは可能と考えている。 以上のようなアクシデントが年度後半に発生したが、次のような進捗もあった。 第1は、企業間連携の分野では、トヨタ自動車のリーダーシップの下、優れた指導力を発揮した実例、すなわち、東日本大震災で被災したルネサス半導体工場の復旧活動を取り上げ、英文の論考にまとめ上げたことである。同様に、この分野において、中小製造企業に対するアンケート調査データを用い、アライアンスに積極的な組織の特性を分析を実施した。 第2は、起業、アントレプレナーシップの分野でも、女性の起業支援とコミュニティー、ソーシャルネットワークの関係を中心に、文献調査および関係者へのヒアリングを行うことができた。また、起業家予備軍にとって、その後の起業活動につながるための要因として、すでに起業した人と関係があるかどうかが大きな影響を持っていることが、データ分析から明らかになると同時に、国際的にみて、日本は他の先進国と比べて、一般の人と起業した人とのネットワークが弱いことも実証できた。その弱さが日本全体としての起業活動水準の低さにつながっているものの、それが例外的に強い地域では、他の地域と比べて起業活動水準が極めて高いことも一つの地域で確認できた。 以上のように、COVID-19の影響を受けつつも、研究成果は着実に得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
企業間連携の分野では、「小集団以上、社会全体未満」のコミュニティーをさらに解析するために、2019年度に取り扱ったトヨタのケーススタディーの国際発信等を含め、分析単位をコミュニティーに置く研究活動を深掘りする。また、ネットワークを構成する相手やネットワークの構造が、事業成長や企業行動に与える影響に関して調査を行う。具体的には、新興企業(マザーズ上場企業)の財務、経営者特性、資本関係、アライアンス関係、ビジネスモデル等の情報を入手し、データベースを作成し、その後、上場後の成長性の違いを分析する。 起業、アントレプレナーシップの分野では、COVID-19の感染拡大により実施延期となった北海道における札幌市および帯広市の女性起業支援コミュニティーについて、関係者へのインタビュー調査を実施する。また、起業支援者の育成とコミュニティーづくりに注力し、女性起業支援を促進している沖縄県と、行政や金融機関を巻き込み、新たな女性起業支援コミュニティーを形成している山梨県の事例について、インタビュー調査を行う。また、岡山県西粟倉村に加えて、国内では秋田県五城目町、島根県江津市などを調査対象に加えて調査を行う。海外では、COVID-19が収まっていることが前提になるが、ミャンマーの起業家ネットワークについての予備調査を行う。データ関連では引き続き、GEM調査を使った分析を進め、日本と比較する国の数を増やすとともに、起業家とネットワークを有しない起業家予備軍とネットワークを有している起業家予備軍の属性や行動の違いの分析をさらに深める。
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Remarks |
高橋徳行(2019)「日本の起業意識と起業活動」①~⑥『やさしい経済学』日本経済新聞連載、2019年4月9日~4月17日 高橋徳行(2019)「新しい創業支援策への期待」『商工金融』2020年2月号
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Research Products
(2 results)