2018 Fiscal Year Annual Research Report
The sociological study of Trans-Locality
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18H00917
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
羽渕 一代 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (70333474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井戸 聡 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (40363907)
永田 夏来 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 講師 (40613039)
岩田 考 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (60441101)
阿部 真大 甲南大学, 文学部, 教授 (60550259)
木村 絵里子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (60710407)
轡田 竜蔵 同志社大学, 社会学部, 准教授 (80388991)
白石 壮一郎 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (80512243)
寺地 幹人 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (90636169)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トランスローカリティ / 条件不利地域 / 地方中枢拠点都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、地方在住者のライフスタイルと社会意識に関わる調査設計とトランスローカリティモデルの構築にかかわる検討をおこなった。具体的には、本研究に先行する調査である「青森 20 -30 代住民意識調査」を分析・検討をおこなった。さらに日本社会学会においてテーマセッション「トランスローカリティと代替的ライフスタイルの理解に向けて」を開催し、理論モデルの検討をおこなった。 地方在住の青年層の地域イメージ、居住地域の価値観と居住歴、労働状況と価値観、自己評価と人生に対する価値観、生活に対する価値観と 人間関係、社会や政治に対する意識、という主観的意識と価値観と幸福感や生活満足度とどのように関連するのか、おおまかな傾向を把握した。青森県むつ市とおいらせ町の地域差にも配慮した分析をおこなってきた。地方と一口に言ってもさまざまな規模があることから、条件不利地域、地方中枢拠点都市、大都市をどのように境界を設定し、より有効な調査設計が可能であるのか議論を重ねてきた。さらにトランスローカリティという概念の有効性についても検討をおこなった。個人をベースとしたライフスタイルの把握に一定程度有効な概念となりうる可能性を見出すことができた。 この成果をもとに、2021年度に予定している量的調査の対象自治体の絞り込みをおこない、北海道と京都府を対象とすることとした。調査項目については、2019年度末に確定する予定であるが、主として地域、労働、人間関係に対する満足度と本人の幸福度と独立して変数を作成しているという点が従来の社会学における幸福研究とは異なるパースペクティブを提供するだろうという手ごたえが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題の進捗状況はおおむね順調である。チーム内の分担研究者の役割分担が明確となっており、研究グループの体制を整えることができた。 2018年度はプレ調査としておこなった量的調査の対象地である青森県むつ市、おいらせ町でのフィールドワークにより、情報収集をおこなった。先行研究によれば、生活満足度や幸福を決定する要因については、主として将来の見通し、経済的要因、ライフステージ、人間関係、恋愛などの状況があげられる。とくに都市の若者を対象とした研究においては、①将来の見通しの明るさ、②経済的ゆとり、③人間関係が良好かどうか、が生活に満足しているという結果が報告されている(浅野 2016)。その一方で、④結婚の有無や⑤恋人の有無は関連がみられたり、みられなかったりという微妙な結果が報告されている。これらの連関を2018年度においてはプレ調査で確認をおこなった。 青森県におけるプレ調査の結果、生活満足度が人間関係、経済的ゆとりの主観的意識、将来への見通しなどと関わっていた。また、おたく的な文化が20代30代の若者に普及していることや性別役割分業意識が強固であることも示された。しかしむつ市とおいらせ町の比較において有意な差は確認できなかった。したがって、生活満足度や生活文化の享受、ジェンダー的な価値観の相違を地域間格差で説明できないのではないか、という仮説が導出された。 理論モデルの構築という観点からいえば、トランスローカリティの概念的内容を明確にするべく、さらに調査研究を深める必要があるが、この検討についても、充実した議論をおこない、概念構築のための基盤は盤石となりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、フィールドワークを充実させること、研究チームの情報の共有の強化を図ること、充実した議論を全体でおこなうことがあげられる。2019年度は、調査票の決定、調査地(市町村レベル)の決定、サンプリングが予定されている。調査票作成については、昨年度までに整えた分担体制により、作業仮説の導出、インデックスの作成、質問項目原案を作成する。そのうえで、全体で検討し改善を行っていく予定である。 また、質的データの共有については、フォーマットを作成し、全体での情報共有が図れるように勉める。トライアンギュレーションの手法についても、研究チーム全体で理解を深めるよう再度説明を代表が行う予定である。 サンプリングについては、2班に分かれそれぞれの担当地域を決めて、班ごとに合理的に進められるよう分担を考えている。
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Research Products
(10 results)