2018 Fiscal Year Annual Research Report
社会的連帯経済の「連帯」を紡ぎ出すものは何か―コミュニティ開発の国際比較研究―
Project/Area Number |
18H00935
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
藤井 敦史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60292190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大高 研道 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (00364323)
小関 隆志 明治大学, 経営学部, 専任准教授 (20339568)
原田 晃樹 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20340416)
柳沢 敏勝 明治大学, 商学部, 専任教授 (30139456)
田中 夏子 都留文科大学, 教養学部, 非常勤講師 (30257505)
坂無 淳 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (30565966)
原田 峻 金城学院大学, 人間科学部, 講師 (40733829)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的連帯経済 / コミュニティ開発 / 社会的企業 / 協同組合 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度、本研究プロジェクトでは、第一に、社会的連帯経済を分析する際の視点として、カール・ポランニーの経済学やモースの贈与論に関する研究会を実施し、2月28日には、協同組合学会春季大会の事前研究会として、ポランニー研究の第一人者である若森みどり氏をお招きして、擬制資本(貨幣・土地・労働)の領域で発生する社会的連帯経済にポランニー経済学を適用する際の方法や可能性について議論することができた。また、研究代表者である藤井が、坂本治也編『市民社会論』について検討する市民社会サミットに招待され、新自由主義の展開という文脈において市民社会のレジリエンスを可能にするための戦略として社会的連帯経済の重要性について検討し、社会的連帯経済論に関する理論的フレームワークを整理することができた。 第二に、海外調査としては、英国East London・Birmingham調査において①協同組合におけるコミュニティ・シェアのようにITを用いた新しい参加の形を生み出しているプラットフォーム協同組合の台頭、②社会的企業を正当化する際に重要視されるSocial Value Actの実際の適用方法、③Citizens UKにおけるコミュニティ・オーガナイジングの手法、④コミュニティ・センターにおけるアセット・ベースのコミュニティ開発手法等についてヒアリング調査を実施し、詳細な知見を得ることができた。 第三に、10月にスペイン・ビルバオで開催されたGSEF2018大会とRIPESS理事会に参加することができ、とりわけ連帯経済の国際的なネットワークであるRIPESSからは、社会的連帯経済の運動が、世界社会フォーラム等反グローバリズム運動のうねりの中から生じており、明確な新自由主義への対抗性と地域主義、当事者を基盤とした自治を志向しているということを明確に理解することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度においては、上記のように、社会的連帯経済を分析する際の理論枠組みを検討すると同時に、GSEFやRIPESSといった国際的な社会的連帯経済運動の主たるネットワークのイベントに参加することで、現在の社会的連帯経済をめぐる国際潮流の動向や抱えている課題について触れることができた。以上の経験は、社会的連帯経済の国際比較調査を行う際の大まかなフレームワークの整備に極めて役立つものであり、2019年度以降の国ごとの国際比較調査(英国・米国・韓国・日本等)を展開する際の重要な基盤となるように思われる。こうした意味で、現在までのところ、本調査研究は、おおむね順調に進展してきていると言えるだろう。 また、2018年度の調査研究からの気付きとして、社会的連帯経済が生み出す社会的価値をどのように評価することが可能なのかという点について、英国のSocial Value Actの地方自治体における適用実態やGSEFビルバオ大会における諸報告から、日本で、現在、休眠預金の資金分配に利用されようとしているソーシャル・インパクト分析の手法が、かなり大きな問題を抱えていることなども理解することができた。今後、本調査研究では、社会的価値評価に関するオルタナティブな手法を提起するなどして、より実践的な研究成果を社会に対して発信していくことを目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究蓄積を元に、2019年度は、まず5月の日本協同組合学会、6月の日本NPO学会において、これまでの研究成果について中間報告を行う。 その後、2019年度8月からは、社会的連帯経済の国際比較調査を本格化させる。第一に、米国では、サンダースが市長時代にコミュニティ・ランド・トラストを促進したバーリントン市や労働者協同組合の発達したデトロイト等の地域を中心に調査を実施。コミュニティ・オーガナイジングを促進するハイランダー・センターを中心に、リーマン・ショック以降、急速に進んだ社会的連帯経済とそれを支えるコミュニティ開発の方法を調査する。第二に、英国では、ロンドンのタワー・ハムレッツ区とバーミンガム市において、Social Value Actの適用実態、また、コミュニティ・オーガナイジングを促進するCitizens UK、居住を基盤にコミュニティ開発を行ハウジング・アソシエーション、Locality等によるCommunity Sharesやオープン協同組合について引き続き調査を実施していく。第三に、韓国における社会的連帯経済に関しても、「協同組合都市」宣言をしたソウル市を中心に、社会的排除問題に取り組む多様な協同組合の実践とそれらを支える自治体政策について検討する。 また、以上のような国際調査から得られた知見を日本の社会的連帯経済の促進にいかにして活かすことができるのかを考察するために、日本の労働者協同組合が抱えている課題(労働者協同組合法制化の影響等)、休眠預金による日本の市民社会への資金提供やそこでの評価のあり方等についても同時に調査研究を進めていく。
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Research Products
(14 results)