2021 Fiscal Year Annual Research Report
社会的連帯経済の「連帯」を紡ぎ出すものは何か―コミュニティ開発の国際比較研究―
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18H00935
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
藤井 敦史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60292190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大高 研道 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (00364323)
小関 隆志 明治大学, 経営学部, 専任教授 (20339568)
原田 晃樹 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20340416)
柳沢 敏勝 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (30139456)
田中 夏子 都留文科大学, 教養学部, 非常勤講師 (30257505)
坂無 淳 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (30565966)
原田 峻 立教大学, コミュニティ福祉学部, 准教授 (40733829)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的連帯経済 / 社会的企業 / 協同組合 / コミュニティ開発 / コミュニティ・オーガナイジング / ミュニシパリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、第一に、これまでの社会的連帯経済に関する研究成果を書籍としてまとめることに注力し、藤井敦史編『地域で社会のつながりをつくり直す社会的連帯経済』彩流社を2022年3月に無事発行することができた。この書籍は、ポランニー経済学、コモンズ論、ミュニシパリズム論などを基盤に、社会的連帯経済の理論枠組みを日本で初めて体系的に提示すると共に、RIPESSに代表される国際社会運動としての社会的連帯経済運動の実態、韓国における社会的経済政策の展開過程、社会的連帯経済の社会的価値を評価する方法などについて詳らかにすることで、学術的に価値の高い貢献ができたと思われる。 第二に、日本国内の社会的連帯経済の動きとして、2020年12月の労働者協同組合法成立を受け、社会的に注目の集まっているワーカーズ・コープやワーカーズ・コレクティブのヒアリング調査(広島協同労働プラットフォーム事業、ワーカーズ・コレクティブ協会によるはたらっく・ざま)を実施した。加えて、労働者協同組合法の意義と課題に関して、藤井と大高が、2021年10月6日に、スペイン・サラゴサ大学で開催された国際学会EMESネットワークの大会で報告(オンライン)を行うことができた。 第三に、社会的連帯経済やコミュニティ開発に関する理論枠組みを深めるために、読書研究会を重ねて、Gilchrist and Taylor 2016 The short Guide to community development 2nd edition, Policy PressやBarcelona En Comu 2019 Fearless Cities, A Guide to the Global Municipalist Movement, New Internationalistといった文献を読み込み、仮翻訳を作成することもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、藤井敦史編『地域で社会のつながりをつくり直す社会的連帯経済』彩流社を2022年3月に無事発行でき、2020年9月に発行した翻訳書M. ボルトン(藤井・大川・坂無・走井・松井訳)『社会はこうやって変える!コミュニティ・オーガナイジング入門』法律文化社に引き続き、私たちの研究を世に問うことができた。そして、以上の書籍発行により、社会的連帯経済やコミュニティ開発をめぐって多くの研究者や実践家との研究交流が活発化し、今後の研究課題も明らかになってきており、大きな成果だったと思われる。 一方、これまでの研究を基盤として、社会的連帯経済という概念が未だに普及していない日本社会で、実態としては既に存在する社会的連帯経済をどのように可視化すべきか、また、2020年12月に成立し、2022年10月に施行される労働者協同組合法成立を起爆剤として、日本で社会的連帯経済が発展しうる条件は何なのかという論点についても検討した。これらに関しては、日本の労働者協同組合の実態を調査するために、センター事業団東京事業本部、広島協同労働プラットフォーム事業、ワーカーズ・コレクティブ協会はたらっく・ざま等、協働労働以外の事例としても、くらしづくりネットワーク北芝、しげんカフェわくわく、四日市市民社会研究所等のヒアリング調査を続けてきた。残念ながら、諸般の事情で、3月に予定していた国内調査を実施することはできなくなってしまったが、既に、社会的企業研究会を基盤に、日本の社会的連帯経済に関わる多くの研究者や活動団体とのネットワークを構築しているので、2022年度以降、さらに国内でのヒアリング調査を拡大していくことができるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度はこの科研調査研究の最終年度であり、藤井敦史編『地域で社会のつながりをつくり直す社会的連帯経済』彩流社を元に、社会的企業研究会等で合評会を行い、これまでの研究蓄積の意義と今後の研究課題について明らかにし、社会的連帯経済をめぐる国内外の研究ネットワークを拡大していく。特に、コロナ禍でなかなか研究交流を行うことができなかったが、欧州の社会的連帯経済研究の中心的担い手であるJean-Louis Laville先生、Phillipe Eynaud先生、Roy Ridley-Duff先生との研究交流会をオンラインで開催し、私たちの研究を今後発展させていくための示唆を得たい。 加えて、日本での社会的連帯経済を可視化するためのマッピング調査を、社会的企業研究会との協力により、進めていく。同じく、日本における社会的連帯経済の促進を目指しているちば社会的連帯経済研究所(https://www.sse-chiba.org/)、社会的連帯経済を促進する会(https://www.ssejapan.org/)、地域と協同の研究センター(http://www.tiiki-kyodo.net/)、日本協同組合連携機構(https://www.japan.coop/)などとも交流しながら、日本の社会的連帯経済のマッピング調査を進めていく際の対象設定や調査分析方法について検討を進め、継続的に国内でのケース・スタディを蓄積させていく。 以上を通じて、本科研研究で培ってきた社会的連帯経済をめぐる国際的な知見や理論枠組みを日本の市民社会に実装化していくための知見を獲得したい。
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Research Products
(18 results)