2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on "unstable masculinity"
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18H00937
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
伊藤 公雄 京都産業大学, 現代社会学部, 教授 (00159865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大束 貢生 佛教大学, 社会学部, 准教授 (20351306)
山中 浩司 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40230510)
藤野 敦子 京都産業大学, 現代社会学部, 教授 (50387990)
多賀 太 関西大学, 文学部, 教授 (70284461)
大山 治彦 四国学院大学, 社会福祉学部, 教授 (70321239)
石井クンツ 昌子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (70432036)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 男性性 / ジェンダー政策 / 男性相談 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、9月、引き続きスウェーデンにおける男性対象のジェンダー平等政策の動向についてのフィールドワーク調査を実施した。スウェーデンの自治体における男性対象のジェンダー政策の動向、また、男性対象のジェンダー平等研修の実態について多くの知見を得た。伊藤は、12月、パリ第7大学での招待講演を行うとともに、現地で、ジェンダー研究者へのインタビューを実施、フランスにおける男性対象のジェンダー政策の動きについて情報収集を行った。 伊藤、多賀、石井クンツは、笹川平和財団との共同研究「新しい男性の役割に関する研究会」に参加し、同財団の実施したアジア5都市の男性調査のデータ分析に参加し、成果を報告書の形で公表した。大山は引き続き報告におけるLGBT問題の研究を、藤野は、男性の単身赴任者問題を軸に男性と労働の課題を、山中は担当の男性の健康問題についての研究を進め、大束は、伊に全国の主要自治体の男性相談の実態についての調査研究を実施した。また、全体として、日本における男性の意識と生活スタイルをめぐるウエッブ調査を実施した。 研究成果については、8月、早稲田大学で行われた国際会議での伊藤の報告、10月の日本社会学会大会での報告を行なった。11月には、国立台湾大学で開催された東アジア日本研究者協議会国際会議において、「男性性のゆらぎ」と題した共同発表を行ない、東アジアにおける日本研究者との討論の場をもった。 伊藤、多賀、石井クンツは、笹川平和財団との共同研究の成果「『男性の新しいあり方』に関する政策提言」をまとめ、内閣府等に提示した。また、伊藤は、単独で、内閣府の第5次男女共同参画基本計画策定の委員会で男性を対象にしたジェンダー平等政策について報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、フィールドワークとしては、ジェンダー政策の先進地域であるスウェーデンにおける男性対象のジェンダー政策の実態について、数度のインタビュー調査を実施し、日本への政策提言の可能性をさぐってきた。また、日本同様、ジェンダー政策が遅れているイタリアを対象にした男性対象の政策の動きをさぐることで、比較社会論的な視座からの政策展開の可能性についても検討してきた。 伊藤、多賀、石井クンツは、笹川平和財団の研究プロジェクト「新しい男性の役割に関する研究会」で、同財団との共同研究を実施し、台湾、中国、韓国、タイなどアジア地域における男性のおかれた状況把握のための現地調査およびアジア5都市(東京、台北、ソウル、上海、香港)の男性の意識と生活実態のアンケート調査の結果の分析に加わってきた。 大山は、担当であるLGBT対象の政策を、山中は男性の健康問題調査を、藤野は単身赴任男性の調査を、また大束は伊藤とともに地方自治体の男性相談の実態について調査研究を進めている。 2019年度は、全国の男女を対象にした男性の意識と生活についてのウエッブ調査を実施し、その結果を現在分析中である。また、当初から課題としていた研究成果をもとにした政策提言についても、内閣府での伊藤の報告や、笹川平和財団との共同研究による政策提言レポートなど、確実に成果をあげつつある。研究成果の公表も、学会発表や講演、論文執筆などで着実に進みつつある。また、国際学会や国際交流を通じた、研究の国際的規模での発展もみられる。 以上。調査研究は着実に施行している。と同時に、これまでの賢雄製菓をもとに、政府および社会に向けての男性対象のジェンダー政策の可能性についての提言も実施しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度(2020年度)は、これまでの研究成果のまとめの作業に入る。特に、ジェンダー政策の進んだ諸国の経験を日本の現状に適応させるという課題や、日本とよく似た状況にある南欧諸国やアジア地域の動きに目配りしつつ、男性対象のジェンダー平等政策の方向性についてまとめていく予定である。 以上のような作業の前提として、2019年度に実施した男性の意識と生活スタイルをめぐるウエッブ調査のデータを、統計処理することで、日本における男性をとりまく現状について把握する。さらに、笹川平和財団との共同研究を通じたアジア地域における男性の意識と生活スタイル調査を、昨年度の日本の調査と比較検討し、日本の男性をめぐる意識と生活スタイルの特徴について明らかにする作業を進める。他方で、LGBT問題、男性の心身の健康問題、男性と労働の問題について、分担者の研究の推進と共同研究者間の情報共有を推進する。 本研究の重要な政策提言は、男性を対象にした公的相談事業の推進をひとつの方向性として考えている。そのため、各国の「男性性のゆらぎ」をめぐるデータ分析や、男性対象のジェンダー政策の展開をふまえつつ、男性を対象にした相談の諸形態の分析をさらに進める予定である。昨年度実施した、主要な地方自治体に対する男性相談の実態、特に、男性相談の内容等についてのアンケートをもとに、男性相談のかかえる課題、さらに男性たちが直面している諸課題について分析を深める。 成果は、政策提言の報告書や論文、書籍の形で公表する予定である。
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Research Products
(19 results)