2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation on manifestation mechanism of texture in foods with complex inhomogeneous structures from microscopic aspect
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18H00962
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
松川 真吾 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (30293096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福岡 美香 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10240318)
鈴木 徹 東京海洋大学, 学内共同利用施設等, 特任教授 (50206504)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 混合カラギーナン / アガロース / 焼き海苔 / 蛍光微粒子追跡法 / 光ピンセット / マイクロMRI / 相分離構造 / LAOS |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究成果を招待講演3件を含む6件の国際学会と4件の国内学会での発表を行い、王立化学会出版の図書に2章を寄稿し、国際科学雑誌に2件のreviewを含む7件を投稿して受理された。これらはいずれも大きな反響があり、食品の不均一構造への関心が高まり、海外からの共同研究の打診や論文引用につながっている。 30nmの蛍光微粒子を用いて混合カラギーナンゲルのミクロ粘弾性評価を微粒子追跡法によって行ったところ、フレームレートを落として露光時間を長くすることでビデオ撮影による追跡可能なことが分かった。さらに蛍光波長とサイズの異なる3種の蛍光微粒子を添加して同時に運動を追跡する方法を行い、異なるスケールでのミクロ構造解明の実験手法が確立できた。 アガロースとイオタカラギーナンの混合系における応力下での水分放出量を測定し、その結果を磁場勾配NMR測定によって得られたそれぞれの糖鎖の運動性および網目構造と比較した。寒天などのアガロースを主成分とする多糖ゲルは糖鎖の凝集が強く貯蔵中の離水が問題となるが糖類を添加すると、それが抑えられる。このような挙動を分子レベルで見た糖鎖の運動性と結びつけることが出来たことは大きな成果である。 焼き海苔の吸湿による物性変化を自作の押し込み試験機によって測定して、固体NMR測定から得られた13C緩和時間の変化と比較した。海苔は数ミリの鱗片状の成分を粘着質が結着している。吸湿すると、まず、靭性が増し、ヤング率が下がるが粘り強くなって破断強度は増加した。さらに吸湿すると軟化が進み破断歪みは大きくなるが、破断強度は低下した。この時、13C緩和時間測定の結果から、最初に粘着質の多糖が水和されて可塑化され、さらに吸湿が進むと鱗片状成分が軟化していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光色の違う異なるサイズの蛍光微粒子を含有させた試料のミクロ粘弾性の測定は、異なるスケールでのミクロ構造と運動性を同時に評価できる有力な研究手法であり、今後、幅広く展開できる可能性を持っている。さらに、数ナノメートルのプローブ分子のNMRによる拡散係数測定結果と比較することで、より幅広いスケールでの構造と運動性の評価が可能となる。一方、500nm以下の微粒子を光ピンセットで補足してミクロ粘弾性を測定する方法では光学顕微鏡の解像度に限界があり、達成できなかったが、今後、蛍光顕微鏡によって位置を確認しながら光ピンセットで補足するシステムを構築することで可能となると考えられる。 アガロースゲルに対するイオタカラギーナン添加の影響は予想以上に大きく、寒天への砂糖添加の影響を分子レベルでの相互作用として説明できるモデル実験となった。 焼き海苔の吸湿による物性変化は複雑な挙動を見せたが、固体NMR測定による分子運動性の変化を見てみると粘着成分と鱗片状の成分のそれぞれが違った挙動で水和による可塑化が起きる、と考えることで説明できた。 混合割合の異なるカッパ/イオタ混合カラギーナンゲルについて、大変形振動歪み(LAOS)による測定では、混合割合に応じて応力-歪み曲線が特徴ある変化をみせた。その変化から相分離構造の連続相の転換が起きていることが示唆された。非線形挙動を見せている応力-歪み曲線から力学的パラメータを抽出する解析手法の確立が必要である。 0.3Tの常温磁石を持つマイクロMRIを用いて混合カラギーナンゲルのNMR測定を行ったが、微粒子追跡法で確認できたミクロ相分離構造を見ることはできなかった。0.3TのマイクロMRIの空間分解能は1mm程度であり、混合カラギーナンゲルの相分離構造はこれよりも大きなドメインサイズを持つと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光波長の異なる30~500nmの蛍光微粒子を用いて、混合カラギーナンゲルとアガロースゲルの異なるスケールでの不均一構造の評価を行う。これまでの検討から、30nmの微粒子には最も追跡が容易なレッドを用いる。また、蛍光を発しない1000nmの透明ポリスチレンビーズを添加して、光ピンセットによる牽引によってミクロンオーダーの構造についての情報を収集する。さらに、このビーズをリファレンスとして蛍光微粒子の数時間におよぶ追跡を行い、長いタイムスケールでの動的な構造を観察する。さらにデンドリマーをプローブ分子として添加し、磁場勾配NMRを用いて拡散係数測定を行い、微粒子追跡法によって得られた挙動と比較・検討する。 蛍光顕微鏡に光ピンセットを装着し、100nmの蛍光微粒子を蛍光観察で位置を確認したのちに光ピンセットに切り替えて捕捉を行い、クワドラント光検出器によって揺動するレーザー光を計測してブラウン運動を定量化して補足微粒子近傍のミクロ粘弾性測定を行う。さらにレーザー光によって牽引した時の応答から応力下でのミクロ粘弾性を評価する。こられを微粒子追跡法によって評価したミクロ粘弾性と比較する。 混合カラギーナンについて、9TのNMRを用いてマイクロMRIを測定し、数ミクロンオーダーの構造の不均一性の観察を行う。 焼き海苔の吸湿による物性の時間変化を追跡する。また、その時の分子運動と水和構造変化を0.5Tの卓上NMRによってT2緩和時間測定を行う。多糖の分子運動性評価はソリッドエコー法によって行い、水和構造の変化はCPMG法を用いる。鱗片状成分と粘着成分のそれぞれの水和過程を速度論的に解析することが目的である。 LAOS測定の結果を解析する非線形モデルを完成させて、混合カラギーナンの大変形下でのマクロな物性を評価する。これを咀嚼に対応したツーバイト試験での結果と比較してマクロなテクスチャーへの影響を検討する。
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