2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation on manifestation mechanism of texture in foods with complex inhomogeneous structures from microscopic aspect
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18H00962
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
松川 真吾 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (30293096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福岡 美香 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10240318)
鈴木 徹 東京海洋大学, 学内共同利用施設等, 特任教授 (50206504)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 微粒子追跡法 / 磁場勾配NMR / 光ピンセット / 相分離構造 / 混合カラギーナン / 混合ジェランガム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果を3件(内招待1件)の国際学会と2件(内招待1件)の国内学会での発表を行った(いずれもコロナ禍の影響でオンラインでの開催)。また、国際科学雑誌に2件の論文を投稿して受理された。これら発表によって食品の不均一構造の解明手法が注目され、国内外の研究者から共同研究の打診と論文引用が多数あった。その中で、中国の研究者との研究者とのコミュニケーションから食品コロイドに関する二国間合同セミナーの開催が協議され、JSPSとNSFCに共同で申請し、採択された。また、ノルウェーの研究者と共同研究の推進を話し合い、ノルウェー科学会議にiFOODnetとして申請を行い、採択された。その中でノルウェー工科大学と魚由来と牛由来のゼラチン混合系について共同研究を行い、微粒子追跡法及びNMR法による不均一構造の解明を担当することになった。 不均一構造を持つ食品としては強いゲルを作るカッパカラギーナンと増粘効果の大きいラムダカラギーナンの混合多糖ゲル及び混合ジェランガムを用いて実験を行った。物性の測定は、数十μオーダーの蛍光微粒子の追跡と磁場勾配NMRによるプローブ分子の拡散係数測定を行い、相分離構造の存在を示唆する結果が得られた。また、大変形振動歪み試験では混合割合の異なる試料において異なる挙動を得られ、それらを定量化するシンプルな解析式を提案した。交流電場下での荷電微粒子の運動を追跡では、印加する電圧の適切な調整が出来ず、試料ゲルを破壊してしまい、測定が出来なかった。デンプン含有の魚肉すり身ゲルのミクロ粘弾性測定のために光ピンセットを用いた振動実験を行ったが、ゲル強度が強く、プローブの微粒子に振動を与えることが出来なかった。また、焼きのりの吸湿過程でのバインダー部とパルプ部の運動性の変化を固体高分解能NMRで測定し、マクロな力学的破断特性との関連を明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
混合カラギーナンゲル系では、相分離構造の形成においては、数十ミクロンオーダーの蛍光微粒子の追跡と磁場勾配NMRによるプローブ分子の拡散係数測定を行い、これらを巨視的な物性挙動と比較することにより明らかにすることが出来た。また、ネイティブ/脱アシル混合ジェランガム系では、ネイティブジェランガムの乾燥試料中での凝集形成と加熱中におけるその脱凝集過程を把握することが出来た。これらは混合多糖ゲルにおける相分離構造の形成とテクスチャーに与える影響を把握する上で重要の知見となるものである。これらの内容を食品物性分野において最も評価の高いFood hydrocolloids(IF7.054)にそれぞれ投稿し、受理された。アガロース溶液については、ゲル化温度付近での不均一性の増大と貯蔵期間中の網目構造の不均一性の増大について、微粒子追跡、磁場勾配NMR、電気泳動、水分透過などの測定により明らかにすることが出来た。ゲル化過程で不均一構造をとるアガロースについてもまた、論文内容は海外の研究者に注目され、中国、ノルウェー及びフィリピンの研究者との共同研究へとつながった。 吸湿過程における焼きのりについて破断強度試験と固体高分解能NMR測定を行い、吸湿による物性変化を固くて強度のあるパルプ部と靭性のあるバインダー部のそれぞれにおける分子運動性の変化によるものであることを明らかにした。 LAOS実験ではさまざまな試料について結果を得ることが出来たが、解析手法の確立には至らなかった。交流電場下での荷電粒子の運動追跡では試料自体の変形が大きく(数ミクロン程度)、荷電粒子のゲル内での移動を評価できなかった。魚肉内のデンプン相でのミクロ粘弾性測定では強固な網目を形成しているために振動変位を検出することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究課題の最終年度であるため、前年度までに行ってきた混合カラギーナン系における大変形振動歪み実験および蛍光微粒子追跡法による実験結果を整理し、シミュレーション 結果などとの比較も検討に加えて、相分離構造およびミクロ物性を解明する。さらに、多糖鎖によるゲル構造に不均一性があると考えられているアガロースゲルについて物性及び分子運動性の測定により解明を行う。また、ナノサイズのゲル微粒子やエマルジョンを添加した場合の巨視的な物性 への影響やザラツキなどの官能性への影響を検討する。 具体的には、不均一構造を持つゲル試料の大変形下での非線形的応答を単純なモデルによって数値計算を行い、カッパカラギーナンとイオタカラギーナンの 混合多糖ゲルについての振動大変形実験と比較を行うことで相分離構造(海島構造や共連続相構造)と混合割合や温度履歴などの試料調製方法 との関連を考察する。蛍光微粒子追跡法は50~300nmのサイズの異なる微粒子を用いて、数秒から数千秒までの幅広いタイムスケールでの観察 によるゲル網目構造を検討する。さらに、アガロースゲルについては、網目の不均一性と応力下での水分放出(ジューシーさに関係)とNMRに よるプローブ高分子の拡散係数測定結果を比較検討し、保存期間中の網目構造変化と保水性について検討する。これらの結果をまとめて、学会 等において発表し、さらに投稿論文としてまとめる。
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Research Products
(10 results)