2018 Fiscal Year Annual Research Report
アセスメント「学びの物語」における個と共同体の試行錯誤過程と研修プログラム開発
Project/Area Number |
18H00993
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
川端 美穂 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00399221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二井 仁美 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50221974)
玉瀬 友美 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (90353094)
木村 彰子 札幌国際大学, 人文学部, 准教授 (70713139)
中西 さやか 名寄市立大学, 保健福祉学部, 講師 (40712906)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学びの物語 / 試行錯誤過程 / 個と共同体 / 研修 / 子ども理解 / 学び / 発達観 / 保育観 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内の「学びの物語」実践については、「子どもを信頼する」という特質のもとで記述を重ねることで、子どもの姿が肯定的に見えてくるという、子ども理解レベルの意義がしばしば強調されるが、他方で「学びの構え」を適切に捉え、保育計画につながるものになっていないのではないかという実践上の課題も指摘されている。そこで本研究では、「学びの物語」を先導的に及び新規に取組む園を比較調査し、1)保育者が「学びの物語」に意味を見いだしていく過程、2)それを支える園内の相互作用のありよう、3)保育者個人・園レベルでの試行錯誤過程と保育の特質との関わり、4)それぞれの保育コミュニティにおける「学び」の捉え方、5) NZの実践現場における「学びの物語」の受容過程と具体的成果等を明らかにし、得られた知見をもとに「学びの物語」の研修プログラムを開発することを目的としている。 30年度は、まず新規取組園において観察及び半構造化インタビューを開始し、個々の保育者の子ども理解の特徴や保育者同士の相互作用の実態、保育のエピソードを綴る際の意識や葛藤等、「学びの物語」実践の背景次元を押さえた。研究経過から、個々の保育者が実践のエピソードを綴ることと保育活動とのつながりについては、複数の経路の存在が見えてきた。次に、先導的取組園を視察訪問し、保育観察及び記録、保育計画、保護者とのコミュニケーションのあり方等、保育活動の実態として基礎データの収集を行った。そこでは「学び」を捉える視点そのものよりも、保育者が子どもの声を聴き取ろうとする「誠実さ」「丁寧さ」といった言葉で保育の内実が語られ、「学びの物語」はアセスメントというより、子どもや保護者とのコミュニケーションツールとして重視されていた。 これらの結果は、今後、調査予定の、NZ及び新規取組園における「学びの物語」の受容過程、試行錯誤過程に関する分析視点となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の計画通り、データ収集及び学会における成果報告が実施されている。具体的には、上述の研究経過から、研究フィールドの園では個々の保育者が「学びの物語」を綴る目的は必ずしも一様ではなく、保育のエピソードを記述することと保育活動とのつながりについては複数の経路の存在が明らかになった。さらに、園内のカンファレンスや研修場面でそれぞれの個々の保育者の子ども観や保育観が可視化されていくプロセスが、「学びの物語」の足場づくりになっていることも示唆された。 今後予定している、新規取組園の「学びの物語」実践に関わる調査やニュージーランドの保育現場における試行錯誤過程に関する調査の分析視点が明確になったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
31年度は(1)国内の新規取組園・先導的取組園の調査を継続するとともに、(2)NZで保育観察及びインタビューを行う。 (1)国内の新規取組園・先導的取組園のいずれにおいても収集するデータは、保育実践の映像、保育記録、保育者が作成した「学びの物語」、観察者のフィールドノーツ、カンファレンスの記録、園内・園外研修の記録、保育者へのインタビュー記録等である。得られたデータは、エピソード分析の他、TEA(複線径路・等至性アプローチ)を用いて、個々の保育者の「学びの物語」受容の促進要因及び阻害要因を可視化しながら、形成的評価と保育活動との関わりについて分析を進める。 なお、30年度の調査によって、新規取組園では年間の保育計画の流れ、各保育者の子ども理解の特徴や保育者同士の相互作用の実態等、「学びの物語」実践の背景次元の基礎情報を押さえている。それらを踏まえて、保育室に設置した広角・ズームアップムービー機能付きカメラで保育活動中の映像を記録し、保育者が「見て、切り取って、語ること」の内容と、その背後にどのような「切り取られないこと」「語られないこと」があるのかについても注視しながら、保育者が子どもの「学び」の何を評価するのか、「学び」を捉える着眼点を明らかにする。 (2)現地NZの保育施設を視察し、保育実践の実態として、子どもと保育者の活動の実際、「学びの物語」の書かれ方、リフレクションのあり方、子どもの姿から「学び」を切り取る際の保育者の視点の置き方や、学びの評価をどのように保育計画につなげているのかについて聴き取りを行う。調査結果から、達成度評価ではなく、形成的評価が実際にどのようになされ、保育の質のどのような側面とつながっているのかについて考察する。 これまでの研究成果は、日本保育学会第72回大会(東京)、20th PECERA(TAIPEI)等で報告する。
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Research Products
(17 results)