2019 Fiscal Year Annual Research Report
国内外の連携による生物多様性保全を目的としたICTによる市民科学の教育実践
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18H01073
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
小堀 洋美 東京都市大学, 環境学部, 名誉教授 (90298018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 樹広 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (00416827)
厳 網林 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (10255573)
桜井 良 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (40747284)
咸 泳植 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (80613372)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 市民科学 / 教育実践 / 国内外連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ.大陸レベルの種のAIとWEB活用の生物多様性の市民科学プロジェクト (1)世界の200以上の都市が2019年と2020年の春に、生物観察の情報量を競う“City Nature Challenge(CNC)を同時開催し、東京のオーガナイザーとして、WEBサイトの開設、観察・同定マニュアルの作成、イベントとオンラインプログラムを実施した。2020年はコロナ禍のため、2019年より参加者と観察数は60%以上減少したが、データは分散化した。また、2018年度に実施したCNCの参加者アンケート調査を分析した結果、本活動を通して参加者が生き物を身近に感じ、また、国際的なプロジェクトであることを実感している人ほど満足度が高かった。また、海外の参加者の意識と比較をした結果、日米において、地元の自然について理解できたと感じた人ほど、今後も継続して同活動に参加する意欲が高いことが明らかにされた。 (2) パラオ共和国でのオンラインプロジェクト:パラオ共和国、日米の多様な組織との連携により、iNaturalistを用いた現地の言語によるWEBサイトを開設し、Ngardok自然保護区でイベントを実施し、保護区での環境保全教育と生物多様性の基礎情報を得た。 Ⅱ.河川の外来植物調査の市民科学プロジェクト:開発した“スマホを用いた多摩川水辺外来植物さがし”のアプリを用いて、多摩川中流域にて、市民・学生が外来植物の群落特性、位置情報、写真をスマホで送信し、データのマップ化・共有化した。 Ⅲ.グリーンインフラ形成のための市民科学プロジェクト:戸建て住宅の庭を対象として雨水流出抑制への寄与度を把握する調査・診断ツールを開発し、世田谷区住宅地内の雨水排水系統に沿った庭に適用した。その結果、排水系統を単位として、戸建建て住宅の位置・規模,配置・構造に応じた流出抑制への寄与度を把握できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに順調に進展していると考える。 City Nature Challengeのプログラムは、予定通り企画案の準備を行い、2019年と2020年の4月末から5月初旬に実施した。2020年はコロナ禍による非常事態宣言中であったため、対面式のイベントは中止し、オンラインでのイベントを実施した。2020年は、参加者が自宅近くでスマホに登録したアプリから動植物の写真を投稿し、また、自宅で種の同定作業を行うことにより、種の同定率は2019年と比較して54%増加した。両年で種名が同定されたデータは位置情報、時間情報などのメタデータと共に国際的な生物多様性データベース(GBIF)に登録され、オープンデータとして、研究者をはじめ誰でも利用を可能とした。参加者へのアンケートにより参加者の関心、学びの評価を行い、日本の参加者の傾向を世界の参加と比較した。 パラオ共和国では初めてのスマホのアプリを用いた市民科学プロジェクトは、パラオ共和国の州政府、博物館、短大、高校などの地域組織と日本と米国の大学、スミソニアン自然史博物館などの国際連携がスムーズに進展し、国際プロジェクトとして、現地で予定通りにイベントを開催することができた。 多摩川の中流域の本流と支流の野川の合流地点である二子玉川の兵庫島公園で実施した外来種しらべのスマホを用いたプロジェクトは2019年の春は予定通りの成果を上げた。しかし、秋のプロジェクトは調査地区が台風19号により浸水し、中止した。 戸建て住宅の庭を対象として雨水流出抑制への寄与度を把握する調査・診断ツールは改善を重ねて予定通り開発した。また、世田谷区住宅地内の雨水排水系統に沿った庭に適用した。また、2019年3月に研究成果を発表の予定であったが、発表予定であった学会はコロナで中止となり、発表はできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
大陸レベルで種の多様性のデータベースを提供するグローバルな市民科学プロジェクトである“City Nature Challenge 2021を世界の400か国以上と連携し、同時開催する。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響のため、本プロジェクトの特徴である「参加者数、観察数、観察種数」を世界の都市との競争は実施しない。 河川の外来植物調査の市民科学プロジェクトを推進する。しかし、従来の調査区域は、2019年秋季の台風19号及びその後の治水工事によって立ち入りが禁止となった。そのため、今後、調査地区の変更によりプロジェクトを継続するかどうかの判断を行う。 グリーンインフラ形成のために開発した市民科学プログラムを実施する。市民科学のアプローチでは、雨水流出環境評価ツールを改良し、二子玉川地域周辺の集水域を対象に、市民と協働による雨水流出環境の調査・評価情報を収集する。また、住民自らが流出抑制へ寄与できる環境の条件を調査し,庭による雨水浸透性能の向上に向けたコミュニケーションに活用していく予定である。 これらの研究結果を国際誌、国内誌に発表すると共に、市民科学の国際学会、日本環境学会及び日本生態学会において発表する。また、得られた成果は市民科学研究会(一社/生物多様性アカデミー主催)や東京都市大学夢キャンパスで広報し情報共有を行い、一般市民や社会に還元する。また、国内および海外の市民科学の最新情報の収集や視察により得た最新の市民科学の知見や情報を整理し、市民科学の著書の執筆を行う。
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Research Products
(16 results)