2018 Fiscal Year Annual Research Report
ナッジとしての“見つめる目”効果:仮想および実空間における社会実験
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18H01079
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
森 津太子 放送大学, 教養学部, 教授 (30340912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 まさみ 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (00334566)
高比良 美詠子 立正大学, 心理学部, 教授 (80370097)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会的認知 / watching-eyes effect / 向社会的行動 / ナッジ / 社会実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、主に本研究の1つ目の目的である、メタ分析を通じた“見つめる目”効果の強さを左右する要因(調整変数)の特定を行った。 これまで“見つめる目”効果の研究は、様々な社会的行動に好影響を及ぼすことが期待される一方で、研究(特に実験室研究)で取り上げられる行動(従属変数)は独裁者ゲームでの配分額などに著しく偏っており、このような研究においては、最近、“見つめる目”効果の存在を否定するものが複数報告されている。しかしその一方で、種々の現実的な問題行動(ごみのポイ捨て、自転車の盗難)を解決することを目指して行われた現場研究では、実質的な効果があったことを報告するものもあり、ただ単に効果の存否を議論するのではなく、“見つめる目”効果が期待できる行動や、その条件を見極めることが重要だと考えられる。このことに関連して従来の研究では、“見つめる目”効果の検証において鍵となるはずの“見つめる目”(独立変数となる刺激)が統一されておらず、研究者がその都度、自由に選択していたために、このことも結果の解釈を難しくしていた。 そこで本研究では“見つめる”効果のメタ分析を広範囲で行うとともに、別の研究グループが最近になって提出したメタ分析(我々の研究よりも限定的な範囲で行われたもの)の再分析も行った。その結果、“見つめる目”効果は小さいながらも確かな効果があり、それは出版バイアスによるものではないこと、社会的に望ましい行動(向社会的行動)の促進よりも、社会的に望ましくない行動(反社会的行動)の抑制において顕著に見られること、向社会的行動においては“見つめる目”刺激の違いが効果を左右する可能性があることなどが明らかになった。実験室研究よりも現場研究で“見つめる目”効果を肯定する報告が多いのは、現場研究のほうが反社会的行動を扱うことが多いことが一因だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度後半になって、“見つめる目”効果に関する研究が数多く報告された。特に反証結果を報告する論文や、既存の研究に異を唱える論文、さらには我々とは別の研究グループによるメタ分析の研究などが報告されたことで、関連論文を当初の予定以上に組織的、網羅的に収集したり、既発表のメタ分析の扱いを慎重に検討するが生まれた。加えてメタ分析の手法にもより妥当性・信頼性が高い新たなものが提案されたとの指摘を受け、その手法の習得のため、メタ分析の実施期間も延長する必要が生じた。なお、現在においては、これらの対応はほぼ終了しており、翌年度にはなったものの、国際学会での成果報告も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
メタ分析によって“見つめる目”効果が期待される行動や、効果を調整する要因(特に“目刺激”の種類)の候補が明らかになってきたため、それらを体系的に操作した実験を実施していく。このことを通じて、“見つめる目”効果をナッジとして利用する場合の条件を特定していく予定である。またメタ分析の成果については、国際誌に論文を投稿する予定である。
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