2020 Fiscal Year Annual Research Report
胎児期に原発事故を経験した福島の子どもたちの小学校への適応についての発達的研究
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18H01082
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
氏家 達夫 放送大学, 愛知学習センター, 特任教授 (00168684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 大幸 中部大学, 現代教育学部, 講師 (80611433)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | SDQ / EC |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年10月に、3回目の調査を実施した。回答者は355名、2011年度群は168名、2012年度群は187名だった。調査内容は、子どもの幼児期の社会的経験(保育経験、外遊び、仲間遊びの程度)、社会的スキル(遊びの内容)、大震災と原発事故の影響に関わる不安、大震災と原発事故の今後の影響期間、さまざまなハザードについてのリスク知覚であった。 これまで収集した資料の分析を行い、次の点が明らかになった。1.SDQとEffortful Control(EC)の間に中程度から弱い相関があった。ECは実行機能や自己制御と関係が深いと考えられている。ECが関係したのは多動、行為、問題総得点であり、いずれも実行機能や自己制御の弱さを示すと考えられる指標であった。SDQやECの尺度としての妥当性を示すと考えられる。2.福島の子どもで、向社会的行動や仲間関係に問題のある割合が高いことがわかっていた。その理由として、放射能への不安やそれによる外遊びの制限が想定された。幼児期の外遊びの程度、放射能への不安や事故の影響についての懸念との関係を調べた。その結果、2012年群でのみ、SDQと親の不安や事故の影響についての懸念の間に有意な相関があった。2011年度群では、懸念が強い方がECが高いという結果となった。この理由は今後の検討課題となる。3.2011年度群を対象に、妊娠時期と事故の関係を分析した結果、事故後に妊娠した子どもがほぼ一貫して、妊娠2期、および妊娠3期に事故を経験した子どもより、問題行動得点が高かった。妊娠初期に事故を経験した子どもに特異に問題行動が多くみられるわけではなかった。事故後に妊娠した子どもの問題行動得点が高かった理由についても、今後の検討課題となる。妊娠時期とECには関係が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度来の新型コロナ感染症の流行のため、研究計画の変更で今年度に家庭訪問を行い、子どもを対象に認知機能と実行機能の測定を行う予定となっていたが、3つの流行の波があり、福島県でも多くの感染者が出たこと、福島大学関係者が認知機能と実行機能の測定を担当予定だったが、その福島大学でクラスターが複数発生したことことから、保護者の了解が得られないと判断し、今年度も家庭での認知機能・実行機能の測定をさらにもう1年遅くすることにした。 今年度は、3回目の調査の他に、保護者にパンデミック下での子どもやとのかかわり方や保護者地震や子どものストレスと対処法についての情報を提供するなど、研究対象者との関係維持に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本研究課題の最終年度である。しかし、年度明け早々に第4波が起こり、福島県内も連日多くの感染者が報告され、県独自に非常事態であることを公表している状況にある。事態は今年度より悪化しつつあるが、年内に収束しそうだというシミュレーションもあることから、事態の推移を慎重に見定めながら、いつでも家庭訪問して認知機能と実行機能を測定できるための準備を進めることにする。合わせて、家庭訪問を行わず、したがって子どもと対面で実施しなくても認知機能や実行機能を測定する方法がないか急ぎ検討することとする。
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Research Products
(2 results)