2019 Fiscal Year Annual Research Report
男子性犯罪受刑者に対する性犯罪防止プログラムの処遇内容と受刑者のタイプの交互作用
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18H01089
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
遊間 義一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70406536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金澤 雄一郎 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50233854)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 性犯罪受刑者 / 性犯罪防止プログラム / 生存分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,性犯罪受刑者の再犯リスクの大きさと,性犯罪防止のための処遇プロブラムの実施密度の交互作用について,前年度よりもより精密な方法を採用して検討した。具体的には,受刑者処遇の世界標準ともなっているRNR原則に基づき,性犯罪受刑者を,高リスク群,中リスク群,及び低リスク群に分類し,このうち標本サイズが一定の大きさ以上である高リスク群及び中リスク群に対する性犯罪抑止プログラムの効果の検証を行った。前年度までに採用した解析方法は,統制変数の調整において,まず標本全体について,傾向スコアを用いて調整を行った後に,高リスク群と中リスク群の処遇効果の検証を行ったものであった。ただし,これはあくまで簡便な方法であり,厳密に統制変数の効果の調整を行うためには,それぞれの再犯リスク群の中で,別々に傾向スコアを算出し,それらを用いて統制変数の調整を行うべきであった。 本年度は,昨年度までの解析上の問題点を踏まえて,前述のより正確な方法を用いて,再犯リスクと実際に行われた処遇密度の交互作用を検討した。その結果,高リスク群に対して高密度の処遇を行った場合は処遇を行わなかった場合に比べて,3年後再犯率は18%減少したが,中リスク群では,中密度の処遇を行った場合と,処遇を行わなかった場合とでは統計的に有意な差は認められなかった。 これらの結果は,2019年11月に,米国・サンフランシスコで開催された第75回アメリカ犯罪学会において,研究分担者らと連名で発表した。また,これに関連して,研究分担者とともに行ってきた法務省矯正局における性犯罪者処遇の評価研究に関するコンサルテーションの結果が,2020年3月に「刑事施設における性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析研究報告書」として公表されるに至った
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は,現在日本の刑務所の受刑者の再犯リスクの大きさと刑務所で行われている性犯罪防止プログラムの実施密度との交互作用を検証し,より効果的な組み合わせを見いだすことである。 2019年度は,上記課題について,前年度よりもより精密な方法を採用して検討した。その結果,高リスク群では高密度処遇が有意な再犯抑止効果を有していたが,中リスク群では有意な再犯抑止効果が見いだせなかった。残された課題は,上記モデルに犯行態様(痴漢か否か)を要因として取り込むことであるが,これは本年度において解決されるものと予想される。以上から,研究は最終目標に近づいてきており,おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までに,以下の2つの結果が得られている。すなわち,1)刑務所入所事由が痴漢である者と,そうでない者では,性犯罪防止プログラムの再犯抑止効果が異なっている。2)性犯罪受刑者の再犯リスクの大きさと処遇密度には,性犯罪の再犯に対して交互作用が存在し,再犯リスクが高い者に,処遇密度の高い働きかけを行った場合は再犯抑止効果があるが,再犯リスクが中程度の者には処遇密度が中程度の働きかけを行っても再犯抑止効果が認められない。この1)と2)の2つの結果を統合するモデルを作成し,より正確な効果測定を行うのが,本年度の目的である 2つの研究が統合できずにきた理由は,痴漢によって刑務所に入所した者の大半は中~高程度の再犯リスクであるにもかかわらず刑期の関係で密度が低い処遇を受けているために,2)の調査対象から外れてしまったからである。そこで,今後は再犯リスクが中~高程度の者で,自らの再犯リスクの程度に対応した密度の処遇を受けなかった者に対しても再犯抑止効果を検証していく予定である。検証に際しては,再犯リスクの高低,処遇密度の高低,及び痴漢か否かといった要因とそれらの交互作用をモデル化する。
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Research Products
(1 results)