2019 Fiscal Year Annual Research Report
大学における科学的根拠に基づく発達障害者への合理的配慮-当事者と周囲との合意形成
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18H01090
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 真理 九州大学, 基幹教育院, 教授 (70274412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立脇 洋介 九州大学, アドミッションセンター, 准教授 (50511648)
横田 晋務 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (70734797)
面高 有作 九州大学, キャンパスライフ・健康支援センター, 助教 (80749474)
安永 和央 九州大学, アドミッションセンター, 准教授 (80777665)
稲田 尚子 帝京大学, 文学部, 講師 (60466216)
鈴木 大輔 九州大学, 基幹教育院, 特任助教 (70455814)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 発達障害 / 合理的配慮 / 大学 / 科学的根拠 / 合意形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究Ⅰ 筆記試験での時間延長措置の妥当性を検討するため、ASD学生、定型発達学生を対象として、センター試験英語ならびに認知機能検査を用いた実験を行った。定型発達学生 では、センター試験英語の時間を1.3倍に延長しても得点が変化しないことが明らかになった。ASD学生は、試験の難易度等の条件に合致する協力者の募集が難航しており(15名に実施済)、次年度も継続することとなった。 研究Ⅱ 障害者支援を行うピアサポーター(以下、PS)学生を対象として、PS活動を行うことで、多様性や障害者支援に関する意識、障害に関する知識、PS活動の動機付けの変化を捉えることを目的とした。今年度は、動機付けや障害者支援に対する意識に関する質問紙調査、および半構造化面接の項目を選定するための予備調査を行ない、初年度参加の7名のPS学生を対象としてデータ取得を行なった。 研究Ⅲ 自閉スペクトラム症(ASD)のセルフアドボカシー(SA)について、引き続き文献研究をおこない調査研究15件、介入研究5件を抽出した。その結果、障害全般のSA構造や特性を検討した研究はあるものの、ASD児者に特化したSA構造や性質について検討したものは見当たらないことがわかった。効果的な介入をおこなうためにも、ASD児者のSA構造や特性を明らかにしていくことが重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究ⅠにおけるASDの研究協力者が十分ではないなか、年度末に向けては新型コロナウィルス感染の対応により、対面での調査が厳しい状況となった。そのため、予定していた調査も延期とするなどで対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究Ⅰ-1 実験に関しては、ASD学生の協力者が増加するよう、参加条件を再検討した上で継続する。 データ分析については、試験において困る内容別に、時間延長の効果を比較する。特にこだわりの強さなどのASD特有の困り感が、得点に与える影響を明らかにする予定である。 研究Ⅰ-2 試験時間延長の効果に関連する認知機能の解明に関しては、WAISによるIQデータ、およびCANTABによる実行機能データと、時間延長による得点の変化の関連について検討する。特に実行機能に関しては、先行研究においてASDにおける困難さが指摘されている反応抑制、ワーキングメモリ、セットシフティングに焦点を当て、それぞれの指標と得点の変化を分析する予定である。 研究Ⅱ 今年度行なった予備調査の結果を元に、質問紙、および半構造化面接の項目について検討する。データ取得については、初年度参加のPS学生を対象として、複数回行い、障害学生支援の担い手としてのPS学生における成長プロセスについて縦断的な変容を明らかにする予定である。 研究Ⅲ 自閉スペクトラム症(ASD)のある学生がセルフアドボカシー(SA)スキルをいかに学ぶかについての研究は少なく(Vermeulen, 2013)、SAスキルをメンターとの交流から得たことを示唆する研究や、家族や教育者から人生の早期に学んだことを示す質的な研究に限られる。そこで、聴覚障害者を対象とした先行研究(Michael & Zidan, 2018)を参考に、障害者全般を対象としたKozminsky(2004)やTest et al(2005)のSAモデルに基づいて、ASD学生に焦点を当てた研究を進める。
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Research Products
(5 results)