2018 Fiscal Year Annual Research Report
目的的行動から習慣行動への遷移を支える微視的理論と依存研究への応用
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18H01105
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
澤 幸祐 専修大学, 人間科学部, 教授 (60407682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹野 貴行 明星大学, 心理学部, 准教授 (10737315)
神前 裕 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (80738469)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 習慣的行動 / 目的的行動 / 依存 / 連合学習 / 行動分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではまず、ハトを被験体として、習慣行動の形成に及ぼす強化スケジュールの違いの影響を検討した。強化スケジュールは、反応に対して反応数依存で報酬を提示する場合と時間経過依存で報酬を提示する2種類あり、そのスケジュールパラメータを系統的に操作しつつ、消去や先行給餌といった反応減少操作を行ったうえで、その反応減少の程度から習慣行動の形成を判定を試みた。併せて、得られた反応データのモデリングを通して、微視的なパターンの違いの検出が可能かを検討した。 また、濫用薬物が習慣形成および依存様行動に及ぼす影響を検討するため3つの実験を行なった。実験1では、道具的行動における反応―強化随伴性の知覚をメタンフェタミン(以下METH)慢性投与が阻害するか、マウスを用いて検証した。METH慢性投与後に餌報酬を用いてレバー押しを確立した後、行動に随伴しない報酬を段階的に高い確率で呈示することで、反応―強化随伴性を段階的に低下させた。統制群では随伴性低下に応じて反応率が線形に低下したが、慢性投与群では非随伴報酬呈示に対する急激な反応低下が見られた。実験2では、パヴロフ型恐怖条件づけ課題を用いて、CS-USに随伴性が無い状況でMETH慢性投与が学習を成立させるか検証したが、群間に有意な差はなかった。実験3では、濫用薬物とギャンブル様行動との相互作用を検証するため、ニコチンまたはメタンフェタミンが強化変動性への選好に与える影響を検証した。終環にFR15とRR15の配置された並立連鎖スケジュールにおいて、ニコチン投与はRR選択肢への選好を有意に増加させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強化スケジュールによる習慣行動形成の研究としては、強化スケジュールの値として5~6種類を設定し、全体として約60%を終えている状況である。先行研究では反応数依存型よりも時間経過依存型でより習慣行動が形成されているが、これとは一部異なる結果が得られつつある。また、反応データのモデリングに関して、従来の二重指数や四重対数正規モデル(Tanno, 2016)に加え、ベイズモデリングの手法も開発(Matsui et al., 2018)し、反応データが得られ次第モデリングに取り掛かる体制を整えている。 行動薬理学的研究としては、年度前半ではラット用オペラント箱の部品購入ならびに環境整備を行うと同時に、すでに稼働しているマウス用の装置を用いて、実施計画に「研究3」として記載した実験および関連した2つの実験を遂行した。 以上のように、当初予定していた研究および今後の研究を行うのに必要な環境整備がおおむね進展していることから、この評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度前半までに強化スケジュールの値として設定した5~6種類について、残りの条件を順次実施し実験を完遂させる。そして得られた反応データについて、そのモデリングを通して微視的な反応パターンの特定を行う。この成果は、習慣行動形成における強化スケジュールの影響を系統的に検討したものとして位置づけられる。2019年度後半では、この成果の論文化に取り組み、海外学術雑誌絵の投稿を目指す。 また、前年度でラット用の装置の整備が完了したため、習慣形成において文脈―強化子連合と反応―強化子連合との競合が果たす役割を検証する2つの実験を遂行する。また、前年度の研究結果を受けて引き続き依存形成のメカニズムに関する検証を行う。特にMETH慢性投与によって動物が反応―強化随伴性の低下に対してより急激な反応率低下を示す結果は、習慣形成を前駆過程とする依存形成の従来仮説が妥当でない可能性を示すため重要であり、条件を追加しながら追試を行う。また、強化率が等しいが変動性の異なる2選択肢のもとで濫用薬物が変動性選択肢への選好を上昇させる結果についても、ギャンブル依存の理解に向けて重要な示唆を与えるため、引き続き検討する。
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Research Products
(9 results)