2019 Fiscal Year Annual Research Report
Noncommutative analysis based on operator algebras
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18H01122
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
植田 好道 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (00314724)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自由確率論 / 行列値確率過程 / C*-環 / 流れ / 表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は非可換解析学の発展を意図したものである.その問題意識に関わる多くの要素が現れる研究対象の一つとして,自由確率論の問題に取り組んでいる.自由確率論の枠組みで正しい相互情報量が何であるか?というのは明確ではなく,分野の創始者である Voiculescu 氏が導入したものと,日合氏宮本氏と共同で導入した軌道自由エントロピーの二つが有力候補で,それらが同一であると理想的である.そこで,Voiculescu 氏の導入したもので重要な役割を果たす自由化過程のランダム行列版である行列値自由化過程を導入し研究を進めている.今年度は,前年度までに得ていた行列値自由化過程に基づく新しい相互情報量的不変量に対する結果に加えて,ユニタリ群上の Brown 運動に対する上からの大偏差評価等の解析も整備し,公表投稿し年度終わりにはアクセプトされた.しかし,最終目標に向けて沢山の課題が残っており,手始めにこれまでの研究で自然に現れる非可換確率過程にとって自然な摂動の空間を決定した.これにより公表したばかりの論文で残していた問題のうち小さいものが一つ実質的に解けたことになる.さらに対応する確率微分方程式の自由確率版 (行列値確率過程に対する通常の確率微分方程式の行列サイズ無限大極限を定式化したもの) に対する弱解の一意性,すなわち,マルチンゲール問題 の定式化とその解決に取り組んでいるが道半ばと言ったところである. 非可換解析学=自由確率論でないことは言うまでもない.すると研究の幅を広げるためには様々な視点の研究を展開する必要がある.幸い,C*-環の一径数自己同型群 (時間発展/流れ) に対するある種の表現論というべき枠組みをいくつかの独立な古い仕事に導かれて明示的に思いついた.これは20年強前に聞いた講演時に直感的に頭に浮かんだことが現実化したものと言える.この研究は現在進行形である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元々具体性を持って取り組んでいる問題は難しい段階に差し掛かっているものの,新しい問題意識が明確化され研究課題に広がりが生まれている.
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Strategy for Future Research Activity |
新しい広がりが生まれたことは喜ばしい.今後は研究が発散せぬようバランスを取ってメリハリのある研究遂行を検討する必要がある.
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