2018 Fiscal Year Annual Research Report
非線形波動に関連した偏微分方程式系の解の大域存在のための構造条件と漸近挙動
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18H01128
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片山 聡一郎 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70283942)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非線形波動方程式 / 初期値問題 / 大域解 / 漸近挙動 / 零条件 / 弱零条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は準線形の連立波動方程式系の初期値問題を2次元および3次元空間において考察した.半線形波動方程式系(すなわち非線形項が未知関数の2階偏導関数を含まないような波動方程式系),および3次元空間における2成分の準線形波動方程式系に対して得られていた既存の結果を拡張し,ある種の"弱"零条件の下で小さな初期値に対する大域解(すなわち任意の時刻までの解)の存在を示した. また準波動方程式系から得られる簡約方程式系の解を用いて,元の問題の大域解の漸近挙動を記述した(以上の成果は投稿準備中). 半線形の場合の簡約方程式系は,本質的に1変数の常微分方程式系であるのに対して,準線形の場合の簡約方程式系は2変数の偏微分方程式系であるところが本質的な違いである.このため簡約方程式系の解析は半線形の場合よりも難しいが,単純な形の場合には解析に成功し,半線形の場合とは異なる漸近挙動が得られることが明らかになった. 具体的には,3次元空間の場合に,零条件を満たさないが,大域解は常に漸近自由,すなわち非線形問題の大域解が非線形項をもたない自由な波動方程式系の解に漸近するような例を発見した.ただし漸近先の自由解の初期値は元の初期値がどんなに小さくなっても元の初期値との相対的な誤差は小さくならないという著しい特徴をもち,非線形項の影響は無視できないことも分かる.半線形の場合には同種の"弱"零条件の元では大域解が漸近自由になるのは零条件を満たす場合に限られることが知られているため,この現象は本質的に系の準線形性によるものであることが分かる.より複雑な形の場合の解析は今後の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,本年度は準線形波動方程式系の"弱"零条件について考察し,一定の成果が得られたため,計画はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では,当初計画どおり進展していると判断されるため,次年度以降も当初計画どおりに進めていこうと考えている.
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