2020 Fiscal Year Annual Research Report
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18H01137
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
岡本 久 学習院大学, 理学部, 教授 (40143359)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形偏微分方程式 / 流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元非圧縮流体の運動方程式であるナヴィエ・ストークス方程式は非線形偏微分方程式である。その解にどのような性質があるのかを調べることは応用上重要な問題で、これまでも様々な立場から研究されてきた。本研究ではロシアの有名な数学者コルモゴロフが提唱した問題を考察し、それを力学系の立場から研究する。数値計算によって巨大レイノルズ数における解を求め、その性質を理論的に解明することが目的であった。 本研究ではまた、水面波の分岐現象を研究することも目的としている。これまでは、渦無しの流れの自由表面の形状を決定する問題を対象としてきたが、近年は渦有り流れの表面の形状決定問題が欧米で勃興しつつある。特に渦による淀み点の発生をどのように知るかを主な標的としたい。これは渦無しの場合にはなかった特徴で、現場の流体力学への応用も期待できる。 解が有限時間で爆発するモデル方程式の研究およびその爆発解の数値計算法を研究した。一般に、非線形発展方程式の解は有限時間で爆発し得る(何らかの特性が無限大になる)。その爆発時刻はどれくらいか、爆発時刻近傍における解の形状はどのようなものか、といった問題が重要なものと考えられている。時間について非整数次の微分方程式を考えてみたい。こうした微分方程式は流体力学以外にもさまざまに応用されているものであるが、数学的にはよくわかっていない点も多い。特に解の爆発については研究が少ない。通常の微分方程式よりも計算ははるかにむつかしくなり、相互作用の解析も不明な点が多い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元非圧縮流体の運動方程式であるナヴィエ・ストークス方程式を空間2次元で考える。この偏微分方程式はレイノルズ数というパラメータを持つが、これが大きい時には流れは乱れてしまい、複雑な流れが発生する。したがって、その解は常に乱れていると考えがちであるが、これまでの研究によって整然とした素直な流れが存在するという意外なことがわかってきた。中でもコルモゴロフ問題と呼ばれる問題において、流線がほぼ円形になる定常解が見つかった。2次元ナヴィエ・ストークス方程式をスペクトル法で離散化し、数値計算することによってこうした円形の流れを発見することに成功した。さらに本研究では、その流線の性質、特に流れ関数の形状を、理論的に解明することにも成功した。これはプラントルによって100年以上も前に発見され、その後50年ほどしてとバチェラーによって再発見された方法を拡張することによって成功したものである。本研究の結果によれば、流れ関数は0次ベッセル関数を使って書き表すことができる。結果を数値解と比較してみると、極めてよく一致していることが分かった。したがって、プラントル理論とその一般化は重要なアイデアであることもわかり、他の問題にも応用可能であるという示唆を受ける。結果はS.-C. Kim and H. Okamoto, Prandtl-Batchelor theory for Kolmogorov flows, vol. 89 (2020) 114401, J. Phys. Soc. Japan, (2020) に発表した。 解の爆発問題については台湾の中山大学の卓建宏教授と研究を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
面白い解を見つけ、その正体の一端を明らかにしたことには満足しているが、まだまだ特殊な例でしかないので、正体の明らかな解の種類をもっと増やしたい。領域のアスペクト比を変えてゆくことによって違う種類の現象が見つかるかもしれない。コロナのために海外研究者との研究交流ができないのは痛手であるが、地道に数値実験をすることだけはできるので、あきらめずに計算を続けてゆくつもりである。プラントル理論の応用はある意味で成功したと言えるが、実はある仮定を置いている点が気がかりになっている。その仮定はまず間違いなく成り立っていることが数値実験で確かめられているが、数学の立場としては、仮定は少なければ少ないほど良い。そこで、その仮定をなくす、あるいは弱めるといった努力も続けなくてはならない。
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Research Products
(2 results)