2021 Fiscal Year Annual Research Report
On the creation of chaos in higher dimensions
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18H01138
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
荒井 迅 中部大学, 創発学術院, 教授 (80362432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 豊 九州大学, 数理学研究院, 教授 (20304727)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 力学系 / カオス / 分岐 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,高次元力学系にカオスが発生するメカニズムを解明し,カオス理論の応用範囲を飛躍的に拡大することである.カオスがどのような分岐を経て発生するのか,数学的に完全な理論が存在するのは1次元の最も基本的な場合のみであり,高次元でカオスが発生するメカニズム数学的な説明はいまだ得られていない.これがカオス理論の応用を進める上で大きな障害になっており,本研究はこの困難をトポロジーや計算機科学を応用して突破することを目指している.今年度は,昨年度の研究で得られた,1次元からの摂動論を用いることが出来ない本質的に新しい構造の連結なジュリア集合を持つパラメータを中心に,エノン写像のパラメータ空間の構造を解明するための研究を進めた.これは,ジュリア集合が非連結となるようなパラメータ集合を連結となるパラメータ集合がパラメータ空間のなかで位相的にどのように配位しているかを明らかにしようというもので,1次元を越えた高次元複素力学系を研究する上で基本的な問題であると考える.この目標のためには,パラメータ空間の構造を効率的に探索する数値計算手法を開発し,さらに不動点の不安定多様体の精度保証付き数値計算や,グリーン関数を評価してその特異点の存在を数学的に厳密に証明するためのアルゴリズムなど,計算機援用証明の技法を開発する必要がある.今年度の研究により,これら必要となる技法の本質的な部分は確立された.特にグリーン関数の特異点の存在証明については、局所的な計算を用いる手法だけでなく,グリーン関数の劣調和性を用いた大域的な手法も開発し,今後の研究の幅を拡げることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ本研究の方向性に沿った応用結果が順調に得られている.高次元複素力学系のパラメータ空間について新しい構造が見つかっただけでなく,その知見を数学的に証明するためのアルゴリズムの開発も進めており,今後の研究の基礎づけが順調に出来ているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究により,複素力学系の構造を調べる新しいアルゴリズムが幾つか確立できたが,パラメータ空間の構造を大域的に研究するためには,アルゴリズムのさらなる高速化が必要である.パラメータ空間の次元が高いため,アルゴリズム的な高速化だけではなく,力学系やグリーン関数の数学的な性質を用いて本質的に計算のオーダーを下げる研究が必要であり,今後はそれらを総合的に推進する予定である.
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Research Products
(3 results)