2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H01142
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 和博 京都大学, 理学研究科, 准教授 (50362447)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 液体金属 / 非弾性散乱 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金属流体における新たな価電子状態、すなわち価電子集団の不安定化挙動に伴う空間ゆらぎの出現の検証を行い、電子ゆらぎの空間・時間スケールの実験的な決定を通じて、その価電子状態の解明を行うことを目的とする。具体的には、臨界点近傍における低密度化したアルカリ金属流体など、流体内分子形成挙動の強い非金属化近傍の金属状態や、融点近傍における非単純金属液体など、共有結合性を内包する特異な金属状態など、価電子不均質化挙動の強い金属状態を実験的に実現し、放射光利用の非弾性X線散乱による電子密度応答の精密観測を行う。 高温高圧の極端条件下で散乱断面積の小さな非弾性X線散乱測定を行う上で、克服すべき最大の課題は、可能な限り高い信号強度を実現することである。特に吸収の大きな金属試料では、高S/Nのスペクトルを得るための効果的な試料環境技術の構築が重要となる。そのため、今年度は、現有高圧容器の改良と整備、さらに専用試料セルの開発を行った。高い信号強度を得るため、入射 X 線のエネルギーや散乱X 線の強度の仕様に合わせて、圧力容器の技術的改良を実施した。現有圧力容器の窓はベリリウム製(厚み10mm)であるが、このベリリウム窓を現状より5mm薄くし、なおかつ圧力に耐える仕様へと変更した。仕様変更に伴う耐圧テストや気密テストなどの法的処置を行い、実験遂行上問題ないことを確認した。一方、専用セル(材質:遷移金属)の開発においては、セルの高温下安定性を高めるため、試料部周辺の部品の溶接箇所を可能な限り減らす試みを実施した。具体的には、積層造形技術を利用した一体成形による作製を初めて試みた。散乱測定の実現にはまだ至っていないが、試料環境技術の構築を進めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高温の液体金属試料は反応性が高く、散乱断面積の小さな非弾性X線散乱測定を安定に実現するためには、長時間にわたる散乱測定においても耐反応性のある液体試料セルを開発する必要がある。今年度、専用の液体試料セルの開発を進め、金属部品の溶接を利用した従来の作製手法に代わり、一体成形によるセル作製に着手することができた。さらに、現有の圧力容器のX線窓の改良を進め、高強度散乱スペクトルを得る試料環境技術の構築を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に導入したCdTe検出器と、今年度、散乱窓を改良した高圧容器、さらに試料セルを組み合わせ、液体金属を対象とした非弾性X線散乱測定を行う。散乱スペクトルから、密度応答関数を決定するデータ解析手法を構築し、その結果から、液体金属中の価電子のゆらぎ状態についての考察を行う。
|