2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of large-scale first-principles MD and its applications of nano-structured materials
Project/Area Number |
18H01143
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
宮崎 剛 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA主任研究者 (50354147)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 彩子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (20595152)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 大規模DFT計算 / ナノ物質 / ナノ粒子触媒 / 物性理論 / 量子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに整備した手法を様々な系に適用する際に擬原子軌道(PAO)基底を自動生成するプログラムを用いて得られた基底の精度を確認し、このプログラムの各種パラメータの妥当性を検討した。また、昨年度末に一般公開した大規模第一原理計算プログラムCONQUESTの分子動力学(MD)に関する機能向上と整備を行った。プログラムの公開に際して、レビュー論文を英国、仏国の共同研究者と執筆、発表した。 応用例としては、白金抗がん剤シスプラチン、ポリマー系、酸化物強誘電体YMnO3の類似物質であるYGaO3、金属有機構造体(MOF)の系に新たに適用した。白金錯体シスプラチンに対しては、抗がん剤として働くための最初のステップである水溶媒中におけるシスプラチンとその類似物質のアクア化過程に対する自由エネルギー計算を行った。計算の結果、第1、第2段階のアクア化で差はほとんどないこと、錯体の種類による差も小さいことが分かった。強誘電体YGaO3についての研究では、複数のドメイン構造に対する構造最適化をマルチサイト法で行った。トポロジカルな欠陥であり、6つのドメイン領域が隣接して作られるボルテックス分域構造に対しては3600原子から構成される構造モデルに対する構造最適化と電子状態解析を行い、フェルミ準位付近の電子状態がこの分域構造によって影響を受けることを示した。また、トリチウムが取り込まれたDNAのテスト系としてポリマーに対する研究が行われた。水素欠陥を含むポリエチレン系に対するMDのスナップショット構造に対して、様々な力場の妥当性を大規模第一原理計算によって明らかにした。金属有機構造体(MOF)と呼ばれる物質に対しては、メタン分子が多数吸着した際の安定性に対する研究を行った。さらに、金属ナノ微粒子、シリコン/ゲルマニウム系の非周期構造、水溶媒中のイオンの水和現象についての理論研究を引き続き行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は応用計算例を増やす部分に対して少し進捗が遅れていたが、今年度は様々な系に対して応用計算例を増やすことができた。コロナの影響で、応用計算を主に担当するポスドク研究者の雇用が予定通りに行えず、ナノ構造物質系に対しての大きな進展は得られなかった。しかし、新たな計算機の導入により計算量が増えたこと、さらに国内外との共同研究により、今までは適用例が無かったポリマー系、さらに強誘電体の系に対する大規模第一原理計算を実現することができた。さらに、多孔性かご状有機分子の系における分子吸着の問題にも着手した。第一原理分子動力学にもとづいた自由エネルギー計算手法も進展が得られた。進捗状況は少し進捗が遅れた部分もあるが、全体としては予想以上であると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、我々が開発した研究手法を用いて行った研究例をさらに増やすことがまず必要である。物質・材料研究機構の材料数値シミュレータや本研究課題で導入した計算機資源を用い、応用計算例をさらに増やし、研究成果を発表していく予定である。また、開発した手法を導入したプログラムを国内外のユーザーが様々な計算機で使えるようにするためのプログラム整備を行うことも重要であると考えている。
|
Research Products
(14 results)