2018 Fiscal Year Annual Research Report
Electronic structure of the ultrafast nonequilibrium
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18H01148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 行章 東京大学, 物性研究所, 助教 (30442924)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超高速現象 / 非平衡電子状態 / トポロジカル絶縁体 / 強相関電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで開発してきた時間分解光電子分光装置(TARPES)を用いた精密測定を通して、固体物質やその表層域に生じる極端な非平衡現象を電子論的に解明することが、本研究の第一の目的である。また、非平衡状態を利用した新たな電子分光法の開拓も視野に入れる。 TARPESをもちいることで通常の角度分解光電子分光法(ARPES)ではみることが出来ない非占有側のバンド分散を直接観測できる。この原理とTHz分光法を用いた低エネルギー域の光学伝導度測定を組みあわせることで、固体表層数ナノメートル域の表面電気伝導度を分光学的手法のみを用いて決定するプロジェクトを進めた。トポロジカル絶縁体Bi2Te3の占有側から非占有側に渡る表面バンド分散とTHzスペクトルの光学伝導度の情報を併せることで、33000 cm2/V/sを越える高い易動度を示すことを見出した。 強相関電子系の非平衡電子状態は、強い相関に由来する特異な緩和過程が存在する可能性がある。特に本年は、電子-ボゾン結合が存在する際の普遍的な振る舞いの解明に向けた研究を展開した。Sr2RuO4のTARPESを行ったところ、電子状態の変化はフェルミ準位近傍40 meV以内で起きていることがわかった。このエネルギーは丁度電子励起とボゾンが相関することに由来するバンド分散の折れ曲がりの位置に相当し、同様の振る舞いは銅酸化物高温超伝導体にもみられている。試料の温度を上昇させたところ、約100Kを境に、緩和の特性が急激に変化した。この変化は、反射型の時間分解光学測定にも見出された。100 Kのエネルギースケールは丁度40 meVに対応する。 この他、黒リンにおけるナノ秒を超える励起電子状態の観測やトポロジカル絶縁体表面の強光パルス照射による表面電子状態の改変などを誌上報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は、以下の3つの指針に沿って研究を進めることにあった。(1)ARPESでは見ることのできない非占有側のバンド分散を直接観測できるという原理を用いたトポロジカル物質の研究;(2)固体表層数ナノメートル域における光現象を観測できる、という利点を生かして、固体表面の光機能に資する研究を展開する;(3)平衡状態から遠く離れた非平衡ダイナミクスの理解や法則の確立を目指して、キャリアダイナミクスの高精度測定を行う。 指針(1)と(2)に沿って、Bi2Te3の表面易動度の全分光学的手法による決定を行った。また指針(3)に従って、Sr2RuO4のフェムト秒-ピコ秒域の電子緩和ダイナミクスを精査し、電子-ボゾン結合の強い系に現れるダイナミクスを系統的に調べた。また(2)に沿って黒リンやトポロジカル絶縁体表面の光機能化に資する研究を誌上発表した。 また、これらの研究を国際連携を強化しつつ進めることを、当初計画していた。TARPESと相補的なTHz測定と反射型の時間分解光学測定はソウル国際大学にある韓国IBS-CCESとの共同の成果である。 以上により、本研究課題は、当初の計画に沿っておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、上記の3つの指針(1)―(3)に沿って研究を進める。 特に電子-ボゾン結合系における非平衡ダイナミクスを系統的に調べるために、新たにSr2RhO4単結晶についてTARPES測定を行う。この物質については、ソウル国際大において代表者が中心となって作製した6 eVレーザー高調波光源を用いることで、既に40 meV近傍に電子-格子相互作用に伴う折れ曲がり構造がバンド分散に現れることを確認している。 この他、最近、一次元系の典型物質であるNbSe3の純良単結晶がKAISTで得られるようになり、やはり先述の6 eV光源を用いてバンド分散が明瞭に得られることを確認している。特に低次元物質では、光励起状態においてエキシトン形成が促進されることが知られており、特有の電子緩和が観測されることが期待される。 トポロジカル絶縁体にフェムト秒域光パルスを照射すると、表面に存在するディラック電子状態において、反転分布が生じることを我々のグループにおいて発表している。この反転分布を利用して広帯域の光、特にTHz域の光に関して光学利得が得られる可能性がある。THz時間分解測定を行うことで、トポロジカル絶縁体表面の非平衡電子状態を用いた新しい光機能を追究する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Ultrafast dynamics of an unoccupied surface resonance state in Bi2Te2Se2018
Author(s)
N. Munisa, E. E. Krasovskii, Y. Ishida, K. Sumida, J. Chen, T. Yoshikawa, E. V. Chulkov, K. A. Kokh, O. E. Tereshchenko, S. Shin, A. Kimura
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 97
Pages: 115303
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Prolonged photo-carriers generated in a massive-and-anisotropic Dirac material2018
Author(s)
M. Nurmamat, Y. Ishida, R. Yori, K. Sumida, S. Zhu, M. Nakatake, Y. Ueda, M. Taniguchi, S. Shin, Y. Akahama, A. Kimura
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 8
Pages: 9073
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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