2020 Fiscal Year Annual Research Report
Quantum interference effect on the surface of topological insulators
Project/Area Number |
18H01155
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川村 稔 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 専任研究員 (60391926)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / アハロノフボーム効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
トポロジカル絶縁体(Bi,Sb)_2Te_3薄膜の量子伝導に関する実験をおこなった。幅500 nmの細線に試料を加工し、細線の長手方向へ磁場を印加することで、トポロジカル表面状態を周回する軌道の量子干渉効果の測定を試みた。希釈冷凍機を用いて試料を60mKまで冷却して実験んをおこなったが、干渉効果の兆候は観測できなかった。このことは、60 mKの低温であってもコヒーレンス長が1μmよりも短いということを示している。 また1ケルビン以下の低温で、2μm角に加工した(Bi,Sb)_2Te_3薄膜試料の磁気抵抗を測定したところ、普遍的コンダクタンス揺らぎを観測した。コンダクタンス揺らぎの大きさは温度の平方根の逆数に比例して増大し、約100 mKで飽和する振る舞いを示した。最低温度でのコンダクタンス揺らぎの振幅は量子コンダクタンスe2/hの約5分の1程度まで大きくなった。これは典型的な普遍的コンダクタンス揺らぎの振る舞いであり、100 mKよりも高温の温度域では、電子温度で決まる熱的拡散長が量子コヒーレンスを支配していることが分かった。また、コンダクタンス揺らぎの自己相関関数からコヒーレンス長を求めたところ、約500 nm程度という値が得られた、この結果は上述の500 nm幅細線で干渉効果が観測できなかったことと整合する。 これらの結果は、MBEで作製した(Bi,Sb)_2Te_3薄膜のトポロジカル絶縁体表面状態では、III-V族半導体で観測されているような長いコヒーレンス長は期待できないということを示している。今後は、薄膜試料の膜質を向上させると同時に、微細加工の精度を上げてより小さいサイズの試料での実験ができるように試料作製方法の見直しに取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コヒーレンス長が想定ていたよりも短く、より小さい形状に加工しないと干渉効果が観測できないことが分かった。500 nmよりも小さいサイズの試料作製の歩留まりが悪く、予定よりも進行がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
微細加工の条件出しをやり直し、100 nm以下のサイズの試料を歩留まり良く作製できるようにする。ドライエッチングの条件が最適化されていないので、エッチング条件を中心に試料作製方法を見直す。また、試料形状をより単純化することで試料作製の歩留まり向上を目指す。
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Research Products
(6 results)