2018 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子ドット・機械振動子複合構造の量子極限到達を目指した超伝導回路の開発
Project/Area Number |
18H01156
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岡崎 雄馬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (60738277)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電気機械振動子 / 半導体量子ドット / 超伝導回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、半導体量子ドットを機械振動子と結合させた複合構造の研究に取り組み、10 fmという極めて小さな振動振幅の検出に成功するとともに、量子ドット中の電子状態がマクロなスケールの振動子の運動に作用する現象を世界で始めて観測した。本研究では、半導体量子構造を結合させた機械振動子に、新たに超伝導回路を融合させ、量子基底状態の実現と量子化振動の検出を可能にする。 H30年度の研究として、機械振動子冷却に向けた高Qマイクロ波共振器の実現を目標にデバイス開発のための基本的なプロセスを確立することを目標とした。本研究では、半導体ヘテロ構造に作製した機械振動子を量子基底状態に冷却するため、LC共振器と機械振動子の間にパラメトリックな結合を形成し、アンチストークスサイドバンドを励振することによってモード冷却を実装することを目指している。LC共振器を利用した振動子冷却には、1万以上のQ値を持つ共振回路をGaAs基板上に形成する必要がある。先行研究でコプレーナ共振回路をGaAs基板上に作製した報告があるが、数百から数千程度のQ値しか得られていない。これはGaAsが圧電材料であり、基板のフォノンと結合してマイクロ波のエネルギーを失うという半導体特有の事情である。本研究では、1万以上のQ値をGaAs基板上で実現するため、多層の微細加工プロセスを確立し、半導体基板と超伝導回路の間にバリア層となるグランドプレーンを層挟んだ回路を実装し、基板の結合を弱めた構造を研究する。本年度はそれらの素子作製に必要な薄膜作製装置の調達を行った。多層のプロセスに必須となる成膜装置・イオンクリーナなどを使用可能な「超伝導デバイス作製装置」の仕様をまとめ装置開発に必要な部品類の調達手続きを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要でも記した超伝導デバイス作製装置に関しては、真空部品・薄膜作成装置を専門とする複数メーカーの技術者と打ち合わせを繰り返し行い、必要なスペックの仕様をまとめた。設計した作製装置としては、超高真空中で高品質な超伝導・常伝導膜を製膜するためのチャンバーや基板加熱冷却機構、安定なレートで接合作製に必要な蒸発セルを採用した。また接合作製に必要となる基板傾斜機構を採用した。また高品質な酸化膜作製のための酸素導入や熱酸化のための基盤加熱機構も取り入れた。さらに複数回にわたるプロセスで電気的な接続を取るために必要となる酸化膜除去のためのイオンガン・逆スパッタクリーニング機構を有している。このような超伝導デバイス作製装置の仕様をまとめ、必要な真空部品などの調達申請を行った。 また本研究では、高感度な機械振動子の計測を実現することが主要な研究目標である一方、そのような振動子を使ってどのような物理量を測るのかといった計測応用も重要である。本年度はそのような応用につながる機械振動子の研究に関しても進捗があった。具体的には、振動子内に含まれる材料の核スピンと結合する様子を世界で初めて観測できた。この結果は、MEMSを使った新しい核スピン計測への応用につながるものである。核スピンの計測は元素の特定や化学結合状態の検出に利用できるため物性物理、材料化学、MRIなど医療応用の分野で重要である。本研究が発展するとこのような分野の発展に貢献できる可能性が見えてきた。今後はこのような応用の観点から研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
超伝導デバイス作製装置に関しては6月に完成し、夏には実際の素子作製を行っていく計画である。成膜ができるようになった際には、成膜条件を最適化するための条件出しを行う。またそれらを用いてジョセフソン接合並びにSQUIDなどの作製を行う。作製した素子はグループで所有しているHe3冷凍機、希釈冷凍機で極低温での直流・高周波測定を行って評価する。また、集中定数回路に基づく超伝導共振器回路を作製し、低温測定でのQ値の評価を行い1万以上のQ値を実現できることを明らかにする。 昨年度の研究で明らかになった機械振動子を用いた核スピン計測の可能性を追求するため、そのような検出が可能な素子構造を設計し有限要素法などの数値計算によって動作原理の検証を行う。設計した素子を作製し、電気伝導測定などを通じて特性を評価する。得られた実験成果などは学会・論文・プレス発表などを通じて積極的に外部発表する。
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[Presentation] Precise transport measurements of the quantum anomalous Hall effect in Cr-doped (Bi,Sb)2Te3 magnetic topological insulator2018
Author(s)
Y. Okazaki, T. Oe, M. Kawamura, R. Yoshimi, S. Nakamura, S. Takada, M. Mogi, K. S. Takahashi, A. Tsukazaki, M. Kawasaki, Y. Tokura and N.-H. Kaneko
Organizer
10th International School and Conference on Physics and Applications of Spin Phenomena in Solids
Int'l Joint Research
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[Presentation] Precise transport measurements of the quantum anomalous Hall effect in Cr-doped (Bi,Sb)2Te3 magnetic topological insulator2018
Author(s)
Y. Okazaki, T. Oe, M. Kawamura, R. Yoshimi, S. Nakamura, S. Takada, M. Mogi, K. S. Takahashi, A. Tsukazaki, M. Kawasaki, Y. Tokura and N.-H. Kaneko
Organizer
8th Summer School on Semiconductor/Superconductor Quantum Coherence Effect and Quantum Information
Int'l Joint Research
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[Presentation] 磁性トポロジカル絶縁体Cr(Bi,Sb)2Te3における量子異常ホール効果の精密抵抗測定2018
Author(s)
岡崎雄馬, 大江武彦, 川村稔, 吉見龍太郎, 中村秀司, 高田真太郎, 茂木将孝, 高橋圭, 塚崎敦, 川崎雅司, 十倉好紀, 金子晋久
Organizer
日本物理学会2018年秋季大会
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