2018 Fiscal Year Annual Research Report
梯子型鉄系化合物における超伝導とマルチフェロイクスの研究
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18H01159
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大串 研也 東北大学, 理学研究科, 教授 (30455331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 良宗 東北大学, 理学研究科, 講師 (30435599)
青山 拓也 東北大学, 理学研究科, 助教 (80757261)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 第二高調波発生 / 梯子型鉄系化合物 / 軌道秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
梯子型鉄系化合物は、唯一つの非正方格子を有する鉄系超伝導体である。超伝導はモット転移近傍で発現することから、強相関電子系超伝導として興味深い物質群である。本年度は、主に以下の二つの課題を実施した。
梯子型鉄系化合物BaFe2Se3に対する示差走査熱量測定の結果から、400 K 付近に構造相転移を示唆する異常があることが示されており、結晶構造の再考が必要である。構造の対称性に関する知見を得るために、空間反転対称性の破れに敏感な非線形光学応答の一種である第二高調波発生(SHG)の測定を実施した。その結果、400 K付近で高温のPnmaから低温のPmn21に結晶構造の対称性が低下していることを明らかにした。BaFe2Se3 における室温の結晶構造では空間反転対称性が破れており、ブロック型磁気秩序を反映したブロック型構造歪みにより誘起されたマルチフェロイック現象だと結論した。
二つの梯子型鉄系超伝導体母物質BaFe2S3およびBaFe2Se3の固溶体BaFe(S1-xSex)3の電子相図を作成した。単結晶を幅広い組成xに対して合成し、室温・高温粉末X線回折実験、電気抵抗率測定、磁化率測定、粉末中性子回折実験を相乗的に行うことでBaFe2S3とBaFe2Se3において存在する、各相転移温度の組成依存性および低温での磁気構造を詳細に調べた。その結果、組成比x = 0.24 付近にストライプ型磁気秩序とブロック型磁気秩序の相境界が存在することが分かった。また、電子相図より、BaFe2S3 の200K付近の相転移とBaFe2Se3の400K付近の相転移には関連があり、これらは低温の磁気秩序を安定化させている構造相転移(軌道秩序・ネマティック秩序)と考えられることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記した研究を滞りなく実施し、空間反転対称性の破れた電子状態を実証することができた。理論では250K付近の磁気転移温度以下で空間反転対称性が破れることが予言されていたが、実験では室温より高温の400Kで空間反転対称性が破れることが分かり、これは予想外の興味深い結果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、固溶体BaFe2(S1-xSex)3 に対する圧力印加やキャリアドープにより、金属化・超伝導の発現を目指している。これにより、梯子形鉄系化合物における超伝導発現機構についてさらなる知見が得られることが期待される。
また、本研究で明らかになったようにBaFe2Se3 では室温で自発的に電気分極が生じていることから、結晶において強誘電ドメインが形成されていると考えられる。従って、第二高調波発生などを用いた強誘電ドメインのイメージングや、電圧(電流)によるドメイン制御などの方向も視野に入れている。
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Research Products
(11 results)