2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on novel quantum phenomena of correlated topological semimetal
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18H01171
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤岡 淳 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80609488)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / トポロジカル量子現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペロフスカイト型AIrO3(A=Ca,Sr)はモット転移近傍に位置する強相関ディラック半金属として知られている。ディラック電子系の電子相関効果は以前から重要な課題であると認識されてきたが、モット転移が生じるような強相関領域でディラック電子の特長を実験的に捉えられる物質はほとんど知られていなかった。 本年度はペロフスカイト型イリジウム酸化物CaIrO3の単結晶において、格子歪みによる一電子バンド幅の制御によって強相関ディラック電子の量子輸送を制御する事を目標とした。直方晶ペロブスカイト型酸化物ではGdFeO3型結晶格子歪みによって一電子バンド幅の大きさを制御することができる。ここでは3 GPa程度までの静水圧の印加によって格子歪み変えながら系統的に磁気輸送特性を調べた。圧力の印加とともにキャリア密度が増大し、電子移動度が大きく減少することが分かった。また、常圧では9T以上の磁場で量子極限に到達し、そこで正の巨大磁気抵抗が見られる。圧力を印加することでランダウレベルのブロード化が生じ量子極限状態と巨大磁気抵抗効果が抑制されることが分かった。量子振動の解析から圧力とともに一電子バンド幅が大きくなり、ディラック線ノードがフェルミレベルから離れる事が分かった。同時に量子緩和時間も減少しており、電子密度の増加によって電子間の散乱が顕著になることで上記のような振る舞いが生じていると考えられる。 また、CaIrO3単結晶薄膜の合成も行った。様々な格子定数を持つ基板上にPLD法によって薄膜を作成し、エピタキシャル歪みを系統的に変化させた時の磁気輸送を調べた。エピタキシャル歪みの大きさによってキャリア密度が減少し、移動度が増大する領域がある事が分かった。歪みの大きさによってディラックノードのエネルギーが変化し、移動度の変化につながっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CaIrO3単結晶において一電子バンド幅による量子輸送特性の制御が当初の期待通りに実施できた。微小結晶に対して低温圧力下での精密測定を行う技術的な困難が当初は懸念されたが大きな問題なく遂行できた。ディラック電子の特徴が見られていると思われる単結晶薄膜の合成には時間を要したが、エピタキシャルゆがみによる系統的なキャリア密度の変化が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は格子ゆがみによる電子状態の制御を行ってきたが、今後は磁場印加などによる電子の対称性の制御に注力する。特に対称性の破れを伴った新しい電子相の探索を行う。
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