2018 Fiscal Year Annual Research Report
Superconducting mechanism and quantum phase transitions on S-doped FeSe studied via NMR under high pressure
Project/Area Number |
18H01181
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 直樹 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (60272530)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上床 美也 東京大学, 物性研究所, 教授 (40213524)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 鉄系超伝導体 / 強相関電子系 / 核磁気共鳴 / 高圧下測定 / 量子相転移 / 量子臨界現象 / 高温超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄系高温超伝導体の発現機構として、「磁気揺らぎ」あるいは「軌道揺らぎ」に起因する説があるが、不幸にも多くの物質において、軌道秩序に関わるネマチック(双晶)相と磁気秩序相がほぼ同時に発現するため、どちらに起因しているか区別がつかなかった。しかし、FeSeにSを8%以上ドープした系では、2GPa (約2万気圧) 以下でネマティック相のみ、4GPa以上で反強磁性相のみが現れて、両相の分離が可能になった。申請者は、Sをドープした系を対象に、常圧から7-8GPa程の広い圧力範囲において、核磁気共鳴(NMR)法を行い、発現機構の解明を目指す。 現在、12%のSをドープした系については、3GPaまでの圧力下で、核磁気緩和時間やナイトシフト、線幅の測定を完了している。これらの測定から、ネマチック転移温度、超伝導転移温度を確かめることができた。磁気揺らぎに関しては、本来高圧側に反強磁性相があるため、圧力を印加すると、単調に増えることが予想される。しかし、予想に反して、低圧で発達した磁気揺らぎが圧力を加えるといったん消滅して、再び弱い磁気揺らぎが現れることを発見した。つまり、圧力印加とともに、二種類の異なる磁気揺らぎが現れることが、本研究によって初めて明らかになった。これは、圧力印加に伴い、フェルミ面のトポロジーが変化するリフシッツ転移が起こり、フェルミ面のネスティングの様子が変化することに起因していると考えられる。現段階では、高圧側で磁気揺らぎと超伝導転移温度に相関があるかどうかはまだ明確ではない。今後さらに高圧の測定を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
12%のSをドープした系については、現在3GPaまでの圧力下で、核磁気緩和時間やナイトシフト、線幅の測定を完了している。ネマティック相や超伝導相の転移温度を測定し、磁気揺らぎの温度圧力依存性も得た。3GPaまでの測定は順調に完了している。また、当初予想しなかった新しい結果を得ており、すでに学術誌に出版されている。現在、4 GPaまでの測定を行っている途中である。 また、キュービックアンビルを用いたNMR測定に関しては、キュービックアンビル圧力セル、それを装着するプローブが完成している。また、プローブを挿入するクライオスタットで長時間の温調が可能であることも確認できている。キュービックアンビル圧力セルの加圧試験を行い、ビスマスの抵抗測定から7GPまで破損せず圧力を加えられることが分かった。
以上の経過を鑑みて、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今のところ、想定したとおり進展しているため、計画の変更を予定していない。引き続き今まで測定したことを別の組成でも行う。別の組成ではよりSをドープしたFeSeのNMRを行う予定でいる。よりSをドープした系では、低圧側でネマティック相が現れず、広い圧力範囲で超伝導相が単独で存在する。この組成では、反強磁性と超伝導に相関があるかどうかについて、より明確に判明するように思われる。 一方、キュービックアンビルに関しては、核磁気共鳴を行う予定でいる。まず、常圧で荷重と圧力の関係をCu2Oの核四重極共鳴法を用いて調べる。次に、信号が見えれば、FeSe系の試料を用いて、4-7GPaの圧力範囲で測定する予定である。年度の前半で、Cu2Oによる圧力校正を完了し、年度後半に鉄系超伝導体を対象として信号検出を目標にしている。
|
Research Products
(7 results)