2020 Fiscal Year Annual Research Report
prediction of proton transfer in proteins based on hydrogen-bond network structures
Project/Area Number |
18H01186
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斉藤 圭亮 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (20514516)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 水素結合 / プロトン移動 / QM/MM法 / 分子動力学法 / 光合成 / アクアポリン / 光化学系II |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトン移動の実例を集めるため,植物や藻類の光合成において水を分解し酸素を発生する反応を触媒する蛋白質である光化学系IIに着目し,次のことを明らかにした.これらの成果はすべて国際誌に論文として発表済みである. ■1)酸素発生反応に伴って最初に放出されるプロトン放出機構を水輸送膜蛋白質アクアポリンと比較した.光化学系IIでは,蛋白質内部に結合している少数の水分子のゆらぎが他の水分子に比べて特異的に小さく,それらの水分子により高効率なプロトン輸送を可能にする経路が形成されていることがわかった.■2)酸素発生反応に伴って2,3番目に放出される2つのプロトン放出経路に関わる重要なアミノ残基の変異体について解析することで,プロトン放出機構を特定した.■3)光化学系IIで起こるプロトン共役電子移動過程について調べた.プロトン移動を促進すると指摘されている「低障壁水素結合」が,電子移動をも促進していることをはじめて示し,その機構も明らかにした.■4)触媒部位の錯体を構成するCa原子が①周辺の水素結合ネットワークの形状を保つ役割,②反応中のプロトン移動を促進する役割,③正常に電子移動するための電位を調整する役割,の3つを担っていることを明らかにした.■5)触媒部位の錯体を構成するMn原子に配位している水分子(W1, W2)とCaに配位している水分子(W3, W4)の酸解離定数(pKa)を算出した.蛋白質中では近くの酸性アミノ酸側鎖(D1-Asp61)により,W1が特異的に脱プロトン化,すなわちプロトン移動を起こしやすいことを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な蛋白質についてプロトン移動可能な経路とプロトン移動不可能な経路の特徴を明らかにすることができたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
主に光合成に関係する具体的な蛋白質について,様々なプロトン移動可能な経路とプロトン移動不可能な経路の特徴が明らかになった.プロトン移動を行う蛋白質は他にもあるので,今後は光合成以外の蛋白質についても,実例を調べ,得られた特徴を一般化できるかどうかを検討する予定である.
|
Research Products
(14 results)