2019 Fiscal Year Annual Research Report
Non-equilibrium ion spectroscopy of tungsten highly charged ions for measurements of ionization cross sections
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18H01201
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
加藤 太治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (60370136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40250112)
中村 信行 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 教授 (50361837)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タングステン多価イオン / 電子ビームイオントラップ / 電離断面積データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高価数のタングステン多価イオンの電子衝突電離断面積を測定することを目的とし、新しい実験方法の原理実証を行う。この実験では、小型電子ビームイオントラップ(CoBIT)装置を用い、装置内で多価イオンを生成・トラップする電極電位をミリ秒オーダーの時間帯でパルス的に変化させ、その間の多価イオンからの極端紫外(EUV)発光の時間分解分光スペクトルを測定する。そこで、多価イオン発光線スペクトルの時間分解分光測定を可能にするため、核融合科学研究所のCoBIT装置に取り付けられているEUV分光システムの改修を進めた。今年度は、マイクロチャンネルプレートを用いたEUV光位置検出器の取り付け、および検出信号の解析用プログラムの作成を行った。また、発光線スペクトルの解析に用いる衝突・輻射モデル計算の高速化のために、統計的な方法に基づいた数理モデルのプログラムコード化を行った。これを用いたタングステン多価イオンについての計算では、厳密な代数的方法を用いた場合の500分の1程度もの短時間で、かなり正確な結果を予測できることが分かった。これによって研究の効率化が可能となった。 これらと並行して、電子ビームイオントラップを用いた多価イオン電離断面積測定において基礎となる、多価イオン発光線スペクトルデータの取得と理論解析を進めた。具体的には、CoBIT装置、および大型ヘリカル装置(LHD)で観測されたタングステン多価イオンの発光線スペクトルの詳細なデータ解析を行った。特に、29価と30価のイオンについて、衝突・輻射モデルによるスペクトルの計算と、大規模な原子構造理論計算を実施し、これらの結果に基づいて、観測された発光線の帰属を新たに同定できた。今後、他の価数についても観測された発光線の同定を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多価イオンの生成・トラップ部の電極電位をパルス的に変動させるための電源回路の改修、および電源回路とEUV時間分解分光システムとを連動させるシステムの構築作業が予定より若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本実験では、小型電子ビームイオントラップ(CoBIT)装置を用い、装置内で多価イオンを生成・トラップする電極電位をミリ秒オーダーの時間帯でパルス的に変化させ、その間の多価イオンからのEUV発光の時間分解分光スペクトルを測定する。これまでにマイクロチャンネルプレートを用いたEUV光位置検出器の取り付け、および検出信号の解析用プログラムの作成を行った。今後は、CoBIT装置の電源系を改修し、多価イオン生成・閉じこめ領域の電極電位をミリ秒オーダーの時間帯でパルス的に変動させる電源回路と、これと連動したEUV時間分解分光システムを構築する。 まず原理実証のため、電離断面積が既知の鉄多価イオンについて、閉じ込め領域の多価イオンを強制的に電離非平衡状態にした後の電離進行フェースでの多価イオンからのEUV発光線強度の時間変化を測定する。想定された発光線強度の時間変化を、衝突・輻射モデルを用いて解析することにより、閉じ込め領域内の鉄多価イオンの価数比の時間変化を求める。これと、既知の鉄多価イオンの電離/再結合断面積を用いた速度方程式から予測される時間変化とを比較して、実験結果の評価を行う。また、これと同様の評価を、既に電気通信大学において測定された金多価イオンについても実施する。 これらと並行して、今後タングステンを用いた電離断面積測定のときの基盤となる、EUV発光線スペクトルの測定と理論解析を進める。
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