2018 Fiscal Year Annual Research Report
中赤外レーザー分光による動的な水素同位体の移動現象の解明
Project/Area Number |
18H01204
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
安原 亮 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30394290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 将裕 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00435520)
赤田 尚史 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (10715478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中赤外レーザー / Er:YAP / 水素同位体 / 分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー干渉計の高性能化が重力波天文学という新たな学術領域を開拓したように、今まで難しかった環境中での水同位体の動的な移動現象の可視化を、最先端の中赤外レーザーを用いた光測定によって実現する。水同位体の移動拡散現象の解明は、核融合分野を始めとして多くの分野で重要な課題である。しかしながら、これまでの質量分析装置や分光装置などの閉空間で行う、固定的な計測では、環境中(例えば空間や物質表面)の動的な移動現象は観測できなかった。中赤外域には、水酸基の収縮振動モードに起因する同位体毎にピークの異なる大きな吸収がある。中赤外レーザー光を物質表面や雰囲気中に照射すると、水素同位体種に対応した波長で光強度が減衰する。これを利用し、空間中での水同位体の定量を行う。本研究によって、将来の核融合炉に向けて極めて重要な、水同位体の簡便かつ高感度なリアルタイム計測手法の実現と水同位体の拡散移動現象の解明を目指す。 本年度は、計測用中赤外レーザー光源の開発を行い、新材料であるEr:YAP(イットリウムアルミニウムペロブスカイト)を用いて、レーザー連続波(CW)発振で最大出力1.6W、 slope効率34%を達成した。この時の発振波長は2.92μmである。本材料では出力、slope効率共に世界最高値である。 特にslope効率は量子欠損効率を超えており、特筆すべき成果である。これまで量子欠損効率を超えたスロープ効率を得ることは理論的にも困難であった。分光学的な検討とレーザー発振キャビティの最適化によって高効率動作を得ることができた。本光源の実現によって高精度での中赤外分光が可能となる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中赤外レーザー分光の課題である、光源の高出力、高効率化に成功した。新材料であるEr:YAP(イットリウムアルミニウムペロブスカイト)を用いて、レーザー連続波(CW)発振で最大出力1.6W、 slope効率34%を達成した。この時の発振波長は2.92μmである。本材料では出力、slope効率共に世界最高値である。本光源の実現によって高精度での中赤外分光が可能となる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
実現したEr:YAPレーザーを基に、Qスイッチ動作や波長変換などを検討する。これによって、信号強度増強のための高ピーク出力化や水同位体の吸収ピークに合致した波長の光源を実現していく。
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