2020 Fiscal Year Annual Research Report
中赤外レーザー分光による動的な水素同位体の移動現象の解明
Project/Area Number |
18H01204
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
安原 亮 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30394290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 将裕 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00435520)
赤田 尚史 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (10715478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中赤外レーザー / 重水 / 軽水 / 中赤外分光 / 水素同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素同位体の移動拡散現象の解明は,核融合分野を始めとして多くの分野で重要な課題である.しかしながら,これまでの質量分析装置や分光装置などの閉空間で行う,固定的な計測では,環境中(例えば空間や物質表面)の動的な移動現象の観測は困難である.この課題を,中赤外レーザーとレーザー計測技術及び水同位体定量研究の知見を基に,「中赤外レーザー分光による水同位体計測手法」の開発によって解決する.中赤外域には,水酸基の収縮振動モードに起因する同位体毎にピークの異なる大きな吸収がある.中赤外レーザー光を物質表面や雰囲気中に照射すると,水素同位体種に対応した波長で光強度が減衰する.これを利用し,空間中での水同位体の定量を行う. これまでに,環境中の軽水,重水の移動拡散現象の解明を目的として,中赤外レーザーによるこれらの検出技術の検証を行った.実験室で中赤外レーザー光路を横切る形でマイクロ流路を設け,流路が空の状態から軽水を流入させ,次に重水を,さらにまた軽水を流した際のレーザー光出力の時間変化を計測した.レーザー出力が流路中の軽水,重水の濃度に対応しており,リアルタイムでの水素同位体濃度変化の検出を実証した. また検出用の高出力レーザーについても,Er:YAPレーザーの高出力化に取り組み,平均レーザー出力の向上と能動Qスイッチ動作に成功した.これらの結果により,計測の信号ノイズ比の向上が期待できる.さらに重要な受動Qスイッチ技術として,Dy(ジスプロジウム)を添加したイットリアセラミックを開発し,可飽和吸収特性を評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である,重水,軽水の中赤外レーザー計測に成功した.中赤外光に高い透過特性を持つ,サファイアプレートを用いたマイクロ流路(流路の幅1から4μm程度)を作成し,開発した中赤外レーザー光路に設置した.そこに軽水,重水を順次投入すると,レーザー光をそれぞれの流体が吸収し,マイクロ流路を透過したレーザー光の出力変化が生じる.本手法を実験室の卓上で構成し,実証実験を行ったところ,マイクロ流路内の重水,軽水の割合をレーザー出力の変化として計測した.このように当初の実証目標が達成された.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標が達成されたため,最終年度は感度の向上と検出限界の検討を行う.計測用の中赤外レーザーであるEr:YAPレーザーについては,発振器の最適化等を行い,さらなるレーザーの高性能化を進める.またマイクロ流路計測について実験を進め本方式の問題点と可能性をまとめる.
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