2019 Fiscal Year Annual Research Report
Investigating topology of QCD with domain-wall fermion action
Project/Area Number |
18H01216
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深谷 英則 大阪大学, 理学研究科, 助教 (70435676)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | トポロジー / 量子色力学 / 格子ゲージ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子色力学 (QCD) では、ゲージ場のトポロジカルな励起が、カイラル対称性の自発的対称性の破れを引き起こしていると考えられている。カイラル対称性が回復する高温相では、トポロジー励起は消失しているか、少なくとも強く抑制されているはずである。本研究では、カイラル対称性を保つフェルミオン作用を用いた格子 QCD シミュレーションを行い、QCD のトポロジー励起の詳細を 高精度で定量評価することをめざしている。 本年度は、前年度までの結果の懸念であった有限体積効果について、アスペクト比が2より大きい格子では問題ないことを確認し、軸性U(1)アノマリーの消失について論文をまとめ、発表した。この論文はPhysical Review D誌に掲載、また、2020年度HPCI利用研究課題優秀成果賞を受賞した。 また、カイラル感受率を軸性U(1)の破れとそれ以外に分解して解析することに成功、その寄与が95% に達するという驚くべき結果を得た。この研究成果はPhysical Review Letters誌に投稿、査読中である。 さらに、より現実的なセットアップであるストレンジクォークを組み込んだシミュレーションを開始、現在順調に実行中であり、その最新結果を日本物理学会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年11月、温度220MeVのシミュレーションを解析していたところ、当初の想定よりも軸性U(1)量子異常のデータ のゆらぎが大きく統計量の不足が判明した。ゆらぎが大き いと本研究の目的である軸性U(1)量子異常を精度よく計算できない。研究遂行上、数%の精度の軸性U(1)量子異常の計 算が不可欠なため、220MeVのシミュレーションを延長して実施する必要が生じた。 その後のシミュレーションは順調に進み、懸念であった有限体積効果もアスペクト比が2より大きい格子では問題ないことを確認し、論文を2本発表することができた。さらに、軸性U(1)アノマリーの研究は2020年度HPCI利用研究課題優秀成果賞を受賞した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果により、SU(2)xSU(2)の自発的破れの秩序変数の微分とされているカイラル感受率の95%が実は軸性U(1)量子異常の効果であるという驚くべき結果を得た。今後は、これが相転移近傍でも成り立つのか否かを調べる。そのために最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)のOakforest-PACS、および阪大のSQUID の計算時間を申請、受理された。また、2+1フレーバーの研究も同時に進める予定である。
|