2020 Fiscal Year Annual Research Report
Producing ultra-cold polyatomic molecules for observing the parity violation in chiral molecules
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18H01229
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮本 祐樹 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 研究准教授 (00559586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久間 晋 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (50600045)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 極低温分子 / パリティ対称性の破れ / カイラル分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒッグス粒子の発見により標準模型が完成をみた一方で、物質優勢宇宙の起源など標準模型では説明できない事象があることも良く知られている。そのため「標準模型を超えた物理」の探索が今後の基礎物理における主要課題である。そこで我々が着目したのは、パリティ対称性の破れに由来するカイラル分子鏡像異性体間のエネルギー差である。このエネルギー差を測定することにより、低エネルギー領域における弱混合角を精密に決定することが最終目標である。しかし、この極小のエネルギー差を観測するためには、カイラリティを持つ多原子分子を孤立状態でミリケルビン以下まで冷却する必要があり、そのような技術は現在確立されていない。そこで本課題では、バッファーガス冷却とレーザー冷却により三原子分子をミリケルビン以下まで冷却することを目的としている。 昨年度までに標的分子の生成とそのバッファーガス冷却に成功していたため、本年度はレーザー冷却に向け、冷却分子の分光を行った。まず分光システムのチェックのためにアブレーションにより同時に生成しているカルシウム原子のレーザー励起蛍光の観測をナノ秒パルス色素レーザーを用いて行った。蛍光強度の実験条件への依存性から、バッファーガス冷却装置の最適化を行った。次に一水酸化カルシウム(CaOH)分子のレーザー励起蛍光の観測を試み、ナノ秒色素レーザーを励起に用いた蛍光観測に成功した。分子の回転構造も明確に観測され、その形状から回転温度は10K程度以下になっていることを確認した。さらには高振動状態の分子の蛍光も観測され、バッファーガスによる振動状態の冷却は回転や並進に比べ効率が悪いという過去の研究と一致する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は当初の予定ではレーザー冷却に取り組む予定であったが、その前段階であるレーザー分光に予想以上に時間がかかったため、達成できなかった。進捗状況はやや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は2020年度に行う予定であった標的分子である一酸化カルシウム分子のレーザー冷却に挑戦する。現在、使用するレーザーの調整を行っているところである。並行してバッファーガス冷却やアブレーションの最適化を進めるとともに、高分解能分光システムを構築する。
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