2019 Fiscal Year Annual Research Report
X-ray spectroscopy of kaonic deuterium atoms
Project/Area Number |
18H01237
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
橋本 直 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 任期付研究員 (20732952)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 史典 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (10455347)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | KbarN相互作用 / J-PARC / X線分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではJ-PARCハドロン実験施設でK中間子重水素原子のX線を世界初測定し、KbarN相互作用のアイソスピン依存性を理解することを目指している。 令和元年度は、まずおよそ半数のX線検出器(26ユニット)を低温高圧(30 K,3 atm)のガス標的システムに組み込み安定動作させ、J-PARCのK中間子ビームを用いたテスト実験を行った。標的は短期間でも比較的多くのX線収量を見込めるヘリウムガス及び水素ガスを用いた。まずK+ビームを用いてK中間子ビームの標的中静止数を最大化するビーム減速材の厚さを調節したうえで、K-ビームとヘリウム標的を用いて様々なビーム条件でのシグナルとバックグラウンド比を比較するデータを取得した。その後標的を水素ガスに変更しおよそ3日分のK中間子X線データを蓄積した。 データ取得後は解析コードの開発をすすめ、K中間子ヘリウムX線測定で従来を凌駕する低バックグランドスペクトルを取得することに成功した。一方で特に生成するK中間子原子数は当初予定より少ないことが判明した。そこでK中間子ビームラインおよびX線検出器周辺の両面において改善を加えることでK中間子重水素原子X線測定を実現すべく検討を進めた。特にガス標的容器の外の真空中に設置していたシリコンX線検出器をガス標的容器を大きくし標的ガス中に設置することがポイントと結論した。小型のテスト容器を製作し、低温高圧の水素及び重水素ガス中でもシリコンX線検出器が問題なく動作することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検出器セットアップを構築しテスト実験としてヘリウム及水素標的を用いたK中間子原子X線測定のビームデータを取得することができた。しかし、K中間子重水素の測定に向けてビームライン及び検出器装置に追加の改善が必要であることがわかったため全体としてはやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き取得したヘリウムおよび水素標的を用いたテストビームデータの解析を進める。とくに標的中に静止したK中間子数やK中間子原子X線収量について決定し、K中間子重水素測定に必要なビームタイムの見積もりを行う。すでに当初予定より多くのビームタイムが必要であることがわかっているため実験セットアップの改善も検討する。まずビームラインを短くしてK中間子ビーム数を増やすとともにそれに伴う光学の改善でビームスポットを小さくし標的中に止まる割合を増やす。また、シリコンX線検出器を標的ガス中に設置することで標的容器によるバックグラウンドやX線吸収を低減することを目指す。セットアップ改善の詳細についてはモンテカルロシミュレーションで検討・最適化し、実験提案の更新としてまとめて年度内にJ-PARC実験審査会に提出する。 実験装置の準備については、シリコンX線検出器を内包する標的容器のデザイン開発を進め、冷却加圧テストを行う。特に検出器信号を取り出すフィードスルーの機密性が開発課題である。ガス中でのシリコンX線検出器の動作試験をより詳細に行い、系統的な性能評価を進める。また、ビームラインの短縮に伴い最上流のビーム検出器の更新も必要であるため、具体的デザインの検討開発を行う。随時国内外の学会、会議、研究会等でプロジェクトの状況を議論する。
|