2019 Fiscal Year Annual Research Report
極限放射線環境下における高感度非破壊プロファイルモニタの研究開発
Project/Area Number |
18H01238
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
豊田 晃久 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (20373186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里 嘉典 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (30342603)
上利 恵三 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 技師 (30391741)
森野 雄平 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50715240)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大強度ビーム計測 / 耐放射線 / ビームプロファイル測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年国内外において利用されている加速器は日増しに大強度化されてきており、その安全かつ安定な運転のためビームを正確かつ連続的に診断するビームプロファイル検出器の重要性は日に日に増大している。本研究では残留ガスのイオン化からの信号を高効率で光伝送する新発想のビーム診断システムを新規開発し、極限条件下でのビーム試験を行って実用化することを目的とする。本研究の手法により、大強度化による高放射線環境下においても動作し、高感度でかつビームを乱すことなく極めて広いダイナミックレンジで測定できる、これまでにないプロファイルモニタが完成する。 この研究目的を達成するために、前年度に構築した発光体の発光効率測定実験セットアップを使用して、発光効率を測定した。具体的には各電極の電圧の値および、電子発生装置であるEGAの出力電圧の値を変えながら電子を出射し電極で加速して発光体に入射させた。生じた発光をカメラで測定し、その画像データを画像取り込みモジュールを利用してPCに取り込んだ。取り込んだデータを各種の画像解析ソフトウエアを利用して解析することで発光分布や発光強度のデータを取得した。EGAの出力エネルギーおよび出力量で規格化された発光量を求めることで発光効率を評価した。その上で入射電子を遮断板で一部遮ることによって位置分解能を評価した。また中間加速電極がなくても十分な性能が出ることが確認できたので、メッシュによる電子線の損失を減らすために当該電極を取り除くことができた。これらのデータに基づいて発光効率および位置分解能に最も優れた最適な発光体、電極のセットアップおよび設定値、およびカメラ観測方法が決定できた。 続けてこのセットアップ構成を実現できるような内部電極および真空チェンバーを設計製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蛍光体発光量の測定実験の過程で想定より電子線による放電が多いことが判明した。これにより電子線の出力が不足し、カメラシステムの感度で観測可能な発光体の発光量を得られないことが分かった。内部電極および真空チェンバーの設計製作を実施するためには、本測定実験による電極最適化が必要不可欠であるため、放電を抑える対策を実施し、再度蛍光体発光量の測定実験をやり直す必要が生じたためその分遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず大立体角光学系暗箱および架台を製作する。前年度の電子線を利用した発光効率測定試験の結果、蛍光体および電極の最適化が行われた。その結果に基づいて主光学およびリレー系の光学の最適化が行われ、主鏡および副鏡、リレーレンズとその支持機構などが購入された。本年度はこれらの光学要素のあおり角度や位置を調整できる機構を備えた光学セルを内蔵した光学暗箱を設計製作する。完成した後に、レーザーコリメーターなどを利用して光学要素のアライメントを実施し、ハドロン実験施設所有の暗室内においてハルトマン法などによって分解能や倍率、集光効率などの光学性能を確認する。また並行して昨年度製作した内部電極および真空チェンバー、ヘルムホルツコイルについて、電源に接続して試運転を実施し、コイルの温度上昇の確認およびホールプローブを利用した磁場の一様性の確認を行う。以上によりモニターの各種コンポーネントの性能が問題ないことが確認できた後に、ハドロン実験施設のBラインコリメータ下流に機器を設置する。ビームタイムにて実際のビームのプロファイルを測定し、収量、S/Nおよび分解能について定量的な評価をおこなう。国内外の学会にて最終的な成果を発表する。 役割分担としては、分担者の里は主に真空チェンバー設計製作、電極設計製作、電磁石設計製作を統括する。分担者の森野は主にシミュレーション計算およびデータ取得系の開発を担当する。分担者の上利は主に磁場分布電場分布の有限要素法計算を担当する。代表者の豊田は主に光学設計製作および全体を統括する。情報を共有しつつ方針を相談する目的で2週間に1回程度のペースで打ち合わせを行う。
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