2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H01239
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
佐々木 憲一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 教授 (70322831)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 博史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 特別助教 (40717914)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 精密磁場測定 / 核磁気共鳴 / 磁場調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の目的は、1:磁性流体の磁場中での特性評価システム、2:磁場均一度の微調整に使用する磁性流体調査および特性評価、3:多チャンネルNMRシステムの設計及び製作、であった。 項目1について、磁性流体や回路に使用する素子における磁化を評価するためには磁化による磁場の乱れを正確に評価しすることが必要である。磁場擾乱を空間的に測定するため、既存の1軸移動ステージ(x軸)に追加する形で、2軸目の移動ステージ(zステージ)を追加した。また、試料の直近における磁場分布を測定するため、直径が6mmの極細NMRプローブの製作を行った。 次に項目2について、磁場調整に適した磁化・粘度を持つ磁性流体を選定するため、まずは2種類の磁性流体の磁化測定を行った。測定には1で開発した装置を用いた。2つの試料について、双方ともに、鉄の磁化の30分の1程度の磁化が測定された。 項目3については、多チャンネルNMRプローブシステムに必要な回路素子や構造材のいくつかの候補について精密磁化測定を行い、もっとも磁場分布に影響を与えない材料の選定を行った。その結果をもとに、プリアンプ回路のプロトタイプを製作した。また、多チャンネルプローブシステムの絶対値校正に必要な標準プローブの開発を進めた。絶対値を正確に評価するためには、プローブの構造材が持つ磁化の影響を極限まで減らす必要がある。そのため、測定領域から構造物をできるだけ遠ざける設計を行い、それでも残る磁化の影響については、反対の磁化極性をもつ物質を直近に設置することで正味の磁化をキャンセルするような配置を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度内に、多チャンネルNMRシステムの設計および製作を計画していたが、磁化率の小さな回路素子の選定および調達に時間がかかったため、全チャンネル分の製作まで至らず、1チャンネル分の回路試作にとどまった。しかしながら2019年4月の動作テストにおいて、プロトタイプ回路は想定通りの動作を示した。また、必要となる素子については必要数の確保を2018年度中に行なっている。2019度夏までには多チャンネルシステムの設計を終了させ、秋には全体を製作する予定である。そのほかの項目、磁性流体の磁場中での特性評価システムと、磁場均一度の微調整に使用する磁性流体調査および特性評価については、概ね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である2019年度の目的は、1:磁場均一度の微調整に使用する磁性流体調査および特性評価、2:多チャンネルNMRシステムの製作、3:磁性流体用磁場調整機構の設計および製作、である。1、2については初年度に引き続いて行う。 項目1について、初年度に開発した精密磁化測定装置を用い、磁性流体の調査および特性評価を初年度に引き続いて行う。本年度は、量を変化させた場合の線型性評価、容器形状の違いによる影響や他の磁性流体の評価などについても、さらに詳細な検討を行い、磁場調整に適した磁性流体の選定と、使用に最適な条件の検討を行う。 項目2について、前年度末に製作したプロトタイプについて動作確認は終了している。本年度は、その全体磁化を評価する。測定した磁化をキャンセルするような材料の選択および構造検討を行い、それを元に24チャネルNMRシステムの設計及び製作を行う。 最後に項目3について、項目1で得られた磁性流体のデータを元に、ppmオーダーからppbオーダーへ磁場均一度を向上させることができる磁性流体の量を概算し、必要量を保持、任意の場所に配置することができる磁場調整機構の設計/製作を行う。完成したNMR磁場測定システムを用いて、既存MRI磁石の磁場分布を測定し、その結果を元に調整機構を用いた磁場分布改善の実証試験を試みる。
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