2018 Fiscal Year Annual Research Report
最新の超高解像度電波観測データを使ったブラックホールジェット駆動理論の検証
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18H01245
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
當真 賢二 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (70729011)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブラックホール / 宇宙ジェット / 活動銀河 / VLBI観測 / MHDシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
活動銀河核ジェットの高解像度電波観測のターゲットは近傍で巨大なブラックホールを有するM87銀河である。ジェットの中心核から離れた領域の超高感度観測(2017年)から、これまで知られていた明るい外縁部とは別に軸付近が別成分として輝いており、三又構造であることが明らかにされた。本年度は、この構造を再現するジェットモデルを構築することができた。これは電磁場エネルギー優勢の近似モデルであるが、粒子の運動も考慮したMHDシミュレーションの結果と整合的な磁場構造を仮定したものである。磁場が強いことから外縁部が明るくなり、相対論的ビーミング効果で軸付近が明るくなることがわかった。この成果は論文としてAstrophysical Journal誌に投稿し、受理された。 また、共同研究者の中村氏(台湾ASIAA)他数名と投稿した共著論文もAstrophysical Journal誌に受理された。これはジェットの一般相対論的MHDシミュレーションによってジェット構造のブラックホール回転速度への依存性を明らかにしたものである。 活動銀河核ジェットとは別の宇宙ジェットであるガンマ線バースト現象についても研究を進めた。重力波とガンマ線バーストと同時に検出した天体について、放射性元素の崩壊を起源とする放射(キロノヴァ)の偏光の理論予測計算を論文にすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、当初計画していた二つの論文を完成させ、著名な論文誌に受理させることができた。 一般相対論的プラズマ粒子シミュレーションのコード開発を4カ年通して進める研究計画としていたが、A. Levinson(イスラエルTel Aviv大学)によって先にコードが作られ、論文が発表された。そこで、長期で開発を進めることは断念し、A. Levinsonと共同研究を立ち上げ、同じコードを使うことにした。木坂氏(研究支援者)がコードを使いこなすことに成功し、A. Levinsonの初期論文では得られなかった物理的な本質を抉り出す成果を出しつつある。ジェット中で磁場に平行な電場が生じる場所や条件を明らかにするという本研究の目的に照らせば、予想以上に早く得られた成果である。 また、連携研究者の誘いもあってイベントホライズンテレスコープ(EHT)共同研究チームに参加した。2019年4月の公開で社会的に有名になったM87ブラックホール影の画像の理論解釈に貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築したジェットモデルは電磁場エネルギー優勢の近似モデルであり、粒子の運動は電磁場中でのテスト粒子として与えている。より現実的な粒子の速度を計算するには、MHDモデルに拡張する必要がある。一般相対論的MHDジェットの解析解を得るのは難しいが、これまでのようにMHDシミュレーションに整合的な磁場構造を仮定することで近似解を得ることは可能であり、独自の方策である。このジェットモデルを基に、遠方ジェットの放射構造を再現するような電子密度分布を得る。これらを使ってブラックホール近傍の放射イメージ計算を行い、EHTの観測と比較してモデルを精査することが可能となる。EHT共同研究チームのメンバーからは、ブラックホール近傍の光の軌道を計算する一般相対論的輻射輸送の手法を学ぶことができる。
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Research Products
(8 results)