2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Near-Infrared Tunable Filter for Research of Star-formation Activity by 3D Spectroscopy
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18H01249
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 英則 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80361567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美濃和 陽典 国立天文台, ハワイ観測所, 准教授 (60450194)
児玉 忠恭 東北大学, 理学研究科, 教授 (80343101)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チューナブルフィルター / 近赤外線 / 3次元分光 / 星形成活動 / 大質量星クラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における主要な開発課題は、近赤外波長可変狭帯域フィルターのための光学素子(エタロン)の製作とその駆動および測距機構の開発である。平成30年度分は、実用的な分光器の詳細設計・実際の製作のための基礎開発・概念設計を行った。 光学素子については、フィネスを稼ぐ以外に吸収率を可能な限り抑えた、広い波長範囲に渡ってフラットな反射特性を低温で実現する大口径の多層膜を有した素子の開発を行った。低温での特性評価が必要だが、納品時検査(常温)では、仕様を満たした性能を有していることを確認した。 面分光チューナブルフィルター(ファブリ・ペロー分光器)を実現するためには、平行におかれた2枚のエタロンの平行度を保持しつつ、微小距離の走査が必要になる。具体的には、観測波長(1~2ミクロン)程度エタロン間隔を変化させる必要があり、さらにその1/10程度の精度が必要となる。そのための駆動機構の開発も本研究の最重要課題の一つであり、これまでに低温駆動が可能なピエゾ素子の性能や入手性の調査・選定・購入、さらにそれを用いた分光器の概念設計が終了した。 ところでファブリ・ペロー分光はその光学特性上、次数に応じた鋭いピークが多数発生するため、不必要な透過光(次数)の光をカットする必要がある。観測波長が固定されている場合その次数選択として狭帯域フィルターを用いることができるが、波長走査を行う場合には波長可変のオーダーソーターが必要になる。そのため低次数のファブリ・ペローをタンデムにして用いるという手段を考案、実現に向けての概念設計を行った。 併せて分光器制御のための制御システム開発のための概念設計を行った。これは実際の試験観測(モジュール搭載候補地)の状況が重要になるため、現地研究分担者との情報交換の議論を行った。観測計画立案には、サイエンスや観測装置の世界的な進捗・動向を注視して行う必要があるからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
入手予定だった駆動素子の購入を進めようとしたところ、当初の想定に反し、メーカー側の生産中止および使用環境での保証が得られらないことがわかり、入手が不可能となった。そのため入手可能な代替駆動素子についての再調査・再検討を行うこととなった。さらに、代替駆動素子の基本性能の確認実験計画、モジュールの構造の変更を視野に入れた機械系および制御系の再設計を行なったため、遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における研究課題は、赤外線観測用波長走査型フィルター(チューナブルフィルター)を開発し、大口径望遠鏡の観測装置の前置光学モジュールとして搭載、その実用可能性を示すことである。次年度はまず、光学素子(エタロン)の低温での性能特性評価試験を行い、実用に足ることを確認する。次いで、これまでに行った分光モジュールの基礎開発・概念設計の結果を進展させ、実用的な分光器の詳細設計の後、実際の製作を進める。 面分光チューナブルフィルター(ファブリ・ペロー分光器)を実現するための開発項目としてメインになるのは、この光学素子(平行におかれた2枚のエタロン)の平行度を保持しつつ、微小距離の走査を行うための駆動機構の開発である。これまでに、低温駆動が可能なピエゾ素子の調査・選定・入手およびそれを用いた分光器の概念設計までがほぼ終了しており、それが実現可能であるという判断のもと、駆動素子の単体の動作試験を行う(常温および低温)。さらに搭載モジュールとしての詳細設計を進め、早期の分光器完成を目指す。並行して、不必要な透過光(次数)の光をカットするオーダーソーターの設計も進める。本研究の目的では波長可変のオーダーソーターが必要であり、それを含めたモジュール全体の制御系の設計・開発も行う。 またこの分光モジュールを用いた観測計画も並行して進め、観測所のタイミングを見計らって試験観測を遂行する。 分光モジュール完成の後、効率的な活用を見据えての搭載候補地(国立天文台ハワイ観測所)との議論も引き続き進める。サイエンスの議論は、世界的な進捗・動向を注視しながら、迅速かつ確実に成果を得るところに重きをおく。
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