2019 Fiscal Year Annual Research Report
solar-flare researches based on the multi-wavelength simultaneous imaging obsevations of solar radio telescopes in Japan and China
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18H01253
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増田 智 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (10262916)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 太陽 / 電波 / フレア / 粒子加速 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年、中国に建設された新しい太陽電波干渉計(MUSER)と日本の野辺山電波ヘリオグラフ(NoRH)の異なる周波数帯の電波で同時観測された太陽フレアの解析を行い、「太陽フレアにおける粒子加速」と「太陽フレアに伴う振動現象」について、新しい知見を得ることを目的としている。2019年度は、7月に研究代表者と連携研究者が中国を訪問し、MUSER観測サイトにおいて、建設が完了した新観測棟の見学とそこに導入される予定の新しい画像処理装置についての説明を受けた。また、北京の中国国家天文台において、日本でのMUSERデータ解析環境整備の準備として、実際のMUSER観測データを用いたデータ解析の実習を行い、MUSERのデータ解析の流れを理解した。また、名古屋大学宇宙地球環境研究所では、2018年度に本科研費で導入した解析サーバに大型のRAIDシステムを追加する形で導入した。これにより、NoRHのデータと当面のMUSER データを保存する領域を確保した。研究面では、MUSERとNoRHの同時観測フレアに対して、そのフレアで検出された振動現象に関する共同研究を行い、両者のデータを用いた科学論文としては最初の論文を出版した。この研究は、MUSERで捉えられた振動とNoRHで観測された振動の周期や発生タイミングから、それぞれの振動の発生機構に迫る内容であり、今後の研究の指針となる重要な成果である。その他にもNoRHのデータを用いた共同研究は国内外で精力的に行っており、論文の出版や国際集会・学会等での発表を行った。装置に関しては、2020年3月末に当初の予定通り、NoRHの科学運用を無事に終了した。今後は、それまでに取得されたデータを用いて研究を行うことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MUSERは、2018年度は1-2 GHz帯の限られた波長帯、かつ、キャリブレーションに使う人工衛星からの電波受信可能時間帯に限って、太陽画像が得られるような状況であった。2019年度に、ようやくキャリブレーション用の大型アンテナが運用されるようになり、より広い周波数帯で太陽電波画像が取得できるようになった段階である。が、2019年度には太陽活動が極小期を迎え、黒点もほとんど出現しなかった。このため、MUSERとNoRHが同時観測した太陽フレアの数は増えず、これまでの観測データを用いた研究を行わざるをえない状況である。本科研費の二つの研究目的「太陽フレアにおける粒子加速」と「太陽フレアに伴う振動現象」のうち、後者については、最初の成果が得られた。両者で同時観測された太陽フレアにおいて、それぞれの装置で電波強度の時間変化に振動が見られ、それぞれの画像漢籍の結果を用いて、振動現象の要因について考察を行った研究が論文として出版された。前者のテーマについては、その準備となるNoRHと硬X線観測衛星RHESSIの同時観測イベントの統計解析に関して研究が進められ、それをまとめた論文がApJに受理された。MUSERの解析環境の整備に関しては、2019年7月に中国を訪問し、実際のデータを用いたデータ解析の講習を受けた。また、名古屋大学宇宙地球環境研究所に2018年度に導入した解析サーバに、データストレージのために2019年度は大型のRAIDを追加で導入した。NoRHは、2020年3月末をもって、運用を終了したが、それまでの国際連携を発展させる形で、特に東アジア域の太陽電波研究の体制作りに関しても、中国・韓国の関係者と打ち合わせを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には、可能ならばMUSERとNoRHを中心とした太陽電波の国際集会を開催し、MUSERとNoRHの共同研究の初期成果やNoRHのこれまでの成果等をまとめるとともに、NoRHの運用終了後の東アジア域での太陽電波研究の連携について協議する予定である。また、以下の三つの研究計画を遂行する。 「(1) 太陽フレアにおける粒子加速領域の特定及び2段階加速の検証」 まず、NoRHとMUSERの同時観測イベントのリストの完全版を作成する。そして、磁気リコネクション領域から上向きに加速された電子を捉えるMUSERと下向きに加速された電子の様子を捉えるNoRHの撮像観測データからそれぞれの放射域の空間的な位置と時間変化を比較する。本解析を通じて、フレア粒子加速領域の特定と2段階加速の検証を目指す。また、得られた研究成果は、国内外の学会等で発表し、論文としてまとめる。 「(2) NoRH の高時間分解能画像データベース構築と微小フレアの研究」約28年間のNoRHの観測データは、すべて名古屋大学と国立天文台で公開されている。太陽静穏時は1秒の時間分解能で観測されているが、画像形式では保存されておらず、必要な画像をユーザーが作成する必要があった。そこで、この高時間分解能の太陽電波画像データベースを構築し、それを用いて、継続時間の短い微小太陽フレアにおける粒子加速研究を推進する。 「(3) MUSERのデータ解析環境の整備」これまでに本科研費で解析サーバと大型のストレージを導入した。2020年度は、HDDを増設し、容量を300TB程度に引き上げる。そして、MUSERのデータの一部を本サーバに格納するとともに、解析に必要なソフトウェアも導入し、国内初のMUSERデータ解析環境を整備する。これは、名古屋大学宇宙地球環境研究所の共同利用・共同研究の一環として、研究コミュニティに公開予定である。
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