2019 Fiscal Year Annual Research Report
Basic study on hierarchical structure of tornado-spawning cyclones and predictability of tornadoes
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18H01277
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新野 宏 東京大学, 大気海洋研究所, 名誉教授 (90272525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
益子 渉 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 室長 (30354476)
栃本 英伍 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (40749917)
末木 健太 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (50802980)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 竜巻 / 台風 / メソスケール渦 / 温帯低気圧 / 対流有効位置エネルギー / 積乱雲 / エントレインメント / 多角形壁雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
温帯低気圧の北東象限に位置する対馬海峡で、突風による多数の船舶の遭難事故を生じた竜巻状渦を内在したメソβスケールの渦(以下、メソβ渦)について、101メンバーのアンサンブル数値実験を行い、メソβ渦の発達に重要な大気条件を調べた。強いメソβ渦を生じた8メンバーと弱いメソβ渦を生じた10メンバーそれぞれのコンポジットを比較したところ、強いメンバーでは渦の北東側と南側の低気圧姓の水平シアが強く、渦の南東側の下層の水蒸気量と水蒸気フラックスが大きいことがわかった。このような水平シアの違いは、温帯低気圧の構造の違いを反映しており、強いメンバーに対応する温帯低気圧はその北東象限の温暖前線に伴う水平シアが大きいことがわかった。一方、水蒸気量と水蒸気フラックスの違いは、メソβ渦に伴う対流の強さに寄与していた。 エントレインメントを考慮した対流有効位置エネルギー(CAPE)(以下E-CAPE)に関しては、2006ー2018年に中国で竜巻を発生させた台風のE-CAPEの特徴を中国の研究者らと共に調べ、中国の竜巻を伴う台風の場合、エントレインメント率が1km当たり40-50%としたE-CAPEが竜巻の発生分布と最も整合的であることがわかった。 先島諸島に暴風・突風をもたらした急発達中の2015年台風第15号の特徴について調べたところ、地上観測から眼の内部に直径7-10kmの気圧低下を伴った低気圧性渦が存在することが明らかになった。また多角形の壁雲の頂点付近に存在するメソ渦では進行方向前方の流入領域で特に風速が強まっていたことが分かった。水平解像度1kmシミュレーション結果からも多角形の壁雲の頂点付近で地表付近の風が強化されていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年9月1日対馬海峡で竜巻状渦による突風で船舶の遭難事故を生じたメソβスケールの渦(メソβ渦)に関するアンサンブル実験を行い、メソβ渦の成因や環境場、メソβ渦を生じた温帯低気圧の構造の特徴に関する解析を終了して、国際誌に論文を投稿した。 E-CAPEに関しては、最近13年間に中国で台風に伴って発生した竜巻について、台風内のE-CAPEと竜巻発生位置の分布の関係を調べ、竜巻の発生分布を最もよく説明するエントレインメント率を調べて国際誌に論文発表したことに加え、スーパーコンピュータ「京」を用いて、スーパーセルの理想実験を複数の解像度で行い、またwarm bubble実験で気温・水蒸気・水平風の環境プロファイルを様々に変化させる感度実験を行い、その解析を進めている。 台風に伴う突風については、2015年台風第15号が先島諸島を通過した際の地上気象観測データから、眼の内部に直径7-10kmの低気圧性渦が存在すること、並びに多角形の壁雲の頂点付近に存在するメソ渦に伴って進行方向前方の流入領域で風速が強まっていたことが分かり、眼の内部や壁雲に存在するメソ渦と地表の暴風との対応が明らかになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでエントレインメントの効果を考慮した対流有効位置エネルギー(E-CAPE)が温帯低気圧に伴う竜巻大発生時の環境場や台風に伴って発生する竜巻の発生ポテンシャルの分布の把握に有効であることを示してきたが、今後はE-CAPEと竜巻の強さとの関係や、個々の竜巻に対するE-CAPEの有効性を調べる研究を行う必要がある。 一方、E-CAPEの有効性を高めるには、信頼できるエントレインメント率を検討する必要があるので、これまで行ってきたLarge Eddy Simulation (LES) の結果にもとづき、スーパーセルのエントレインメント率の環境場への依存性を明らかにする。 さらに、台風に伴う小スケールの突風の構造に関しては、先島諸島に暴風をもたらした2015年台風第15号の通過時に、眼の壁雲内側付近で発生した顕著な突風について、台風の眼の内部や壁雲付近に存在するメソスケール渦の解析結果と合わせて、ドップラーレーダー等の観測データを用いた解析を行い、その構造を明らかにする
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Research Products
(8 results)