2019 Fiscal Year Annual Research Report
成層圏における惑星波下方伝播生起メカニズムの解明と対流圏への影響評価
Project/Area Number |
18H01280
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向川 均 京都大学, 理学研究科, 教授 (20261349)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣岡 俊彦 九州大学, 理学研究院, 教授 (90253393)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 惑星規模波 / 下方伝播 / 成層圏 / 不安定性 / 対流圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は以下の項目について研究を行った。 (1)長期再解析データ及び衛星データの解析: 気象庁長期再解析データJRA-55を用いて、北半球冬季におけるプラネタリー波束の下方伝播の統計的解析を行い、抽出した全事例中の約83%が0度から西経135度の西半球の経度帯で生じ、成層圏中で東西波数1のプラネタリー波が卓越していること、東経45度から東経135度の経度帯では、全事例中の約6%しか生じないが、東西波数2のプラネタリー波が卓越していることを明らかにした。また、いずれの事例でも、下方伝播が発生しているのは成層圏中で順圧的に発達した高気圧の東側であることを示した。
(2)中層大気力学モデルの構築と安定性解析: まず、準地衡風渦位方程式に基づく多層球面モデルを用いた流れ場の力学安定性解析が実行可能であることを確認した。また、北半球冬季について、1978年12月から2018年2月までの期間における日々の5hPa流線関数解析値を基本場として、球面上の非発散順圧渦度方程式に基づく安定性解析を行い、極端に大きな成長率を持つ不安定モードが出現する顕著に不安定な基本場の特徴について解析を行った。ここで、第1不安定モードの成長率が全解析期間の平均よりも3標準偏差以上大きくなる期間で極大となる日の基本場を顕著に不安定な基本場と定義した。その結果、顕著に不安定な基本場は12事例存在することが明らかになった。また、顕著に不安定な基本場については、多層球面モデルを用いた安定性解析を行い、いくつかの基本場では、非発散順圧渦度方程式に基づく安定性解析で得られた不安定モードとよく似た水平構造を持ち、鉛直には順圧的な構造を持つ不安定モードが存在することが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期再解析データを用いた惑星規模波下方伝播の解析は順調に進展している。一方、準地衡風渦位方程式に基づく多層球面モデルを用いた安定性解析は実行可能であることが確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)長期再解析データと大規模アンサンブルデータの解析:1958年から2019年の長期再解析データを用いて抽出した、冬季北半球成層圏で生じた惑星波の顕著な下方伝播事例に対し、いくつかの類型に分け特徴を明らかにする。さらに、気象研究所全球大気モデルによって計算された「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース」d4PDFを用いて、同様の下方伝播事例の抽出を行い、長期再解析データの解析結果との比較を通し、下方伝播が生じる条件を明らかにする。
(2)中層大気力学モデルを用いた数値実験とAGCMアンサンブル予報実験:昨年度に引き続き、準地衡風方程式に基づく球面多層中層大気力学モデルの構築に取り組む。また、構築したモデルの下端境界条件として惑星規模波の強制を与え、モデル内での惑星規模波の伝播特性について解析する。一方、顕著な惑星規模波下方伝播事例などについて、大気大循環モデル(AGCM)を用いたアンサンブル予報実験を行い、成層圏での惑星規模波下方伝播の生起と関連する前駆擾乱の特定と、下方伝播が対流圏循環に及ぼす影響の解明を目指した解析を実施する。
|
Research Products
(37 results)