2021 Fiscal Year Annual Research Report
成層圏における惑星波下方伝播生起メカニズムの解明と対流圏への影響評価
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18H01280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向川 均 京都大学, 理学研究科, 教授 (20261349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣岡 俊彦 九州大学, 理学研究院, 教授 (90253393)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 惑星規模波 / 下方伝播 / 成層圏 / 不安定性 / 対流圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は以下の項目について研究を行った。 (1)長期再解析データ及び衛星データの解析:冬季成層圏における惑星波の下方伝播について、1979年から2020年の長期再解析データに基づく統計的解析を行い、南半球冬季における下方伝播の特徴を調べ、昨年度までに解析した北半球冬季の結果との比較を行った。その結果、南半球でもほぼ北半球と同じ数の下方伝播事例が観測され、全下方伝播事例の6割から7割が西半球で生じ、西経135度付近にピークを持つという特徴が得られた。この結果は、北半球の場合、西半球の0度から西経135度の経度帯で下方伝播が生じやすく、全事例の9割ほどを占めていたのとは対照的であった。このような南北半球間の違いは、大規模地形や海陸分布の南北半球間の違いに由来すると考えられるが、この点については、さらなる研究が必要である。 (2)太陽活動に伴う北大西洋振動(NAO)循環変動の変調:これまでの研究により、冬季で平均したNAOに伴う循環偏差は、太陽活動サイクルに従って大きく変調することが示されている。すなわち、太陽活動が活発なときには、NAOに伴う帯状風偏差は上部成層圏まで延伸するが、低下したときには、帯状風偏差の鉛直上方への拡がりは制限される。このような特徴を持つ冬季平均NAOの太陽活動に伴う変調の物理メカニズムを明らかにするために、1958年から2021年までのJRA-55長期再解析データを用いて、運動量と波エネルギーの収支解析を実施した。その結果、太陽活動が活発なHS(High Solar)年での帯状風の強化は波強制の直接的な強化で説明できることが示された。一方、HS年には、地表面から中部成層圏の領域で、帯状風からの傾圧変換と、中部成層圏における帯状風からの順圧変換が強まることが示された。これらのエネルギー変換の強化は帯状風の強化とも関係している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期再解析データを用いた惑星規模波下方伝播の解析が順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)アンサンブル予報実験結果の解析と成層圏循環の安定性解析:Noguchi et al. (2016)で、2009年に生じた極渦分裂型成層圏突然昇温発生期に気象研究所の大気大循環モデルを用いたアンサンブル予報実験を実施した結果、アンサンブルメンバーのいくつかで、成層圏惑星規模波の下方伝播が生じたことが示された。このため、順圧渦度方程式を用いて、このアンサンブル平均予測場の力学的安定性解析を実施する。また、比較検討のため、同じ大気大循環モデルを用いて2010年に生じた極渦変位型成層圏突然昇温発生期におけるアンサンブル予報実験を実施し、順圧渦度方程式を用いてアンサンブル平均予測場の力学安定性解析を実施する。そして、それらの結果を取りまとめて論文を作成・投稿する。 (2)長期再解析データ及び衛星データの解析:冬季成層圏において、強い極渦が持続した2019/2020年の事例と2021/2022年の事例について、長期再解析データと衛星観測データに基づき、惑星波の下方伝播の特徴を比較し、極渦強化との関連を解析する。さらに、気象研究所全球大気モデルによって計算された「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース」d4PDFを用いて類似の事例を抽出し、前者との比較を通して、惑星波の下方伝播と極渦強化の関係を明らかにする。
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Research Products
(26 results)